(虚)『愛の悪魔』(フランシス・ベイコンの歪んだ肖像)


画家に限らず、「表現する人」は、自分の中に悪魔が潜んでいる……

そう僕は考えているのですが、何かを自分のイメージに合せて、五感
に訴えるべく表現することは、大変なエネルギーが必要となります。

これから御紹介する『愛の悪魔』とは、今世紀最大の画家とされている
(少なくとも僕は、興味が無いけれど……)フランシス・ベイコンとその
愛人だったジョージ・ダイアーとの関係に焦点を絞って描いております。

ベイコン55歳の時に、一人の男が彼のアトリエに盗みに入った……。
男の名はジョージ・ダイアー。

まず、フランシス・ベイコンを演じたデレク・ジャコビ様が何時もながら
上手いんですねぇ……。ただ、妙にお姐さんしていて、上手すぎて鼻に
ついてしまうんです。僕もゲイなんですが……どうも、こうした仕種は
何か自分の持っている饐えた部分を見せ付けられて居るようで苦手
なんですね。

片や、ジョージ・ダイアーを演じたのがダニエル・クレイグ様、中々奇麗
な身体の線をしております。

映画は、そのベイコンが描いた絵をモチーフとして、幻想的で儚く毒々
しい映像美を繰り広げてゆきます。

ただ、僕としては「史実重視」の方なので、こうした解釈は面白いとは
思うのですが、観ていても全然入り込めないのもまた事実でして、一人
の「表現者」とその取り巻きに因って、精神状態が崩れて行く様を隠喩
として画像で展開するのは良いのですが、それであればベイコンの独白
は不要では無いかと感じました。

監督のジョン・メイプリイ様が、そうした方向性で作って居ないのは、
明白でして、まあ僕の「腹には入らない」んです。

画家を取り扱った映画では、『アルテミシア』、『フリーダ・カーロ』、
『ゴッホ』等が直ぐに脳裏に浮かぶんですが、「隠喩」にしても、例えば、
『フリーダ・カーロ』は、彼女の死の前に回想される一瞬の意識の流れ
的なものが、一つの絵、それに繋がる実際の出来事の1シーンだけで
実に鮮やかに納得できましたし、彼女の生き方も僕が憧れている面を
体現してくれた様で、全部解ってしまうんです。

今回の映画の欠点は、製作上仕方無いことですが、彼の描いた絵が
財団の不許可により貸し出して貰えなかったことに尽きるでしょう。
それがあれば、ずっと深く入り込めた気がするのですが、残念でなりま
せん。

「大河浪漫を愛する会」 大倉 里司(HCD05016@nifty.ne.jp)
(4月6日 シネマライズ渋谷にて鑑賞)

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