(凄)『幻の湖』

【警告】以下の文章は、映画史を重んずる方にとっては甚だしく不愉快にさせる
怖れがあります。自分の場合には、観た映画が楽しければそれで良いと言う事
で無責任に書いております。そういうことなので、この文章に限らず、自分か、
マダムの書いた当館の文章に関しては無断一部転載&全部転載して頂いて構
いません。











***********ホントに読むの???************






「知る人ぞ知る」と言う映画でして、自分の場合、ニフティの旧映画フォーラムで
『幻の湖』と言う題名が出た時には、中国大陸にでもある「幻」の湖を追って探検
を続ける捜索隊の話しかなぁ……と無知なんでそう思っていた次第です。(^^ゞ
こんな奴ですから……映画史に精通する皆様の失笑を買いながら書き続けている
のは先刻承知の上。でも……映画って言うメディアは観てナンボのものでしょう。
この『幻の湖』は正に、こうしたぼくのような映画史に無知な人間ですら、只管書き
続けたいと言う或る種の衝動を掻き立てる映画なんです。

で……この映画が傑作、名作か?と言われれば、残念ながらそうでは無いのです。
壮大な失敗作。日本最大の映画会社である東宝設立50周年にて、一年間の大
ロケーションを敢行し、犯罪映画史上空前の名作と思っている『砂の器』等の脚本
家である橋本忍氏が原作、脚本、監督を務め、野村芳太郎氏等が製作者として
名前を連ね、音楽が芥川也寸志と言う豪華さ……キャストの方も絢爛豪華の一言。
実に真面目に撮っているのが画面の随所に伺えますが……。が……。











************いよいよ本編突入***************







物語の方を簡単に説明すると、琵琶湖のほとりにある雄琴温泉の風俗営業店(早い
話しがトルコ風呂)『幻の城』に務める道子(南条玲子御嬢様)は、お市の方と言
う源氏名で仕事をこなしていた。彼女の楽しみは数年前に拾ってきた犬の「シロ」
と共に琵琶湖のほとりをジョギングすることでありました。この店には、何故か
アメリカ人女性のローザ(デビ・カムダ御嬢様)も務めており、とりわけ道子とは
石仏を見に行く位の親しい関係。或る日、愛犬のシロが何者かに殺されたとの通報
を受け、道子は逆上……地元警察の力を借りて調査したところ、愛犬を殺したのは
どうやら、ある芸能プロダクションの一味と判明。事務所側は回答を渋り、示談の
申し入れをするが、東京に出てきた道子の情熱に負けて真犯人の名前を出してしまう。
それは、有名作曲家、日夏と言う男だった……だが……日夏の事務所のガードは異常
に固く、事務所の高飛車な受付嬢もケンもホロロ。思い余った道子は出刃包丁を出し、
彼女を脅迫……(^^;;だが、肝心の居場所が判らない……と、思い悩んでいた矢先
に出てきたのが元同僚のローザだった……。
何としても日夏に思い知らせてやる……道子の情念は、余りにも意外な方法で爆発
するのでありました……

と…アウトラインを書いたけれども、もっと話しは入り組んでおりまして、多彩な
登場人物が交錯するんですよ。そこそこキャラクターは立ちそうなんですが、何処と
無く変なんです。おまけに話しが進行していく内に「運命の人」が二人出てくるし、
しかもその内の一人が戦国哀話を出してくるものだから(このパートが一番マトモ)
観ているほうは唖然を通り超して「笑うしか無い」と言う時間に突入します。しかも、
ほんとうに真面目に撮っていて「ズレ」があっても真摯な想いが伝わるだけに全然
嫌味を感じないんです。これが、もしウケ狙いで撮っていたらたちまちにして醜悪
な姿を出していたとぼくは思うのですが、それが無いんです。だから素直に笑える
のですね。(^^)

で………今回は二回目なんですが、観ていて気がついた点を幾つか挙げておくと、
現代編で、愛犬シロが殺された後の捜査方法が不必要な迄に丁寧(笑)そして、
時代劇編ですと、小谷城を舞台にしているだけありまして、時代考証(主に美術面
ですが)が、これがホントに良く出来ているんです。本物のお市の方(関根恵子様)
が着ている和服もそうですが、侍女みつが最後に着ていた白無垢なんですが………
普通だったら手を抜く素材ですが、織りが細かいんですわ。最高級の「絹糸」を使
いこれだけで幾らしたのだろうか………と溜息が出た程。そして、特筆すべきは
「襖絵」の凄まじさ。ぼくが観た限りですと『犬神家の一族』の襖絵も凄かったけ
れども、あれは明治〜大正時期に製作されたものでしょう。ですが………今回のも
のは、室町末期〜江戸初期の物に間違い無い気が致します。お市の方をはじめとす
る部屋のほうは、金箔をふんだんに使い、扇絵も鮮やか………これは、江戸初期の
ものでは無いかと(光が当たる部屋なんで)そして、奥の部屋が薄暗くなっており
ますが……チラリと襖絵が映るんですわ。これって……(^^ゞ作風と色合いから
言っても室町末期の漢画では無いのか?とそう思ったのですよ。これだけのものが
映画で観れるとは思っていなかったので正直申して嬉しかったですねぇ……

「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2000年4月1日 自由が丘武蔵野館にてレイトショー)

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