(無)『メイド・イン・ホンコン』

観ていながら頬がヒリヒリした。どうしようも無く救いが無く……「死」を通
じてでしか溶け合うことの出来なかった三人の人生。にも係わらず、ぼくはこ
の映画に強く惹かれずには居られない。

と……個人的感慨から先に入ってしまいましたが、この『メイド・イン・ホン
コン』は観る人を確実に選ぶ映画です。

筋書きのほうを掻い摘んで書きますと……97年の香港。一匹狼的な存在であ
る不良少年チャン(サム・リー)は、組織が貸し付けた金を回収するのが生業
となっていた。
チャンには、多少知恵遅れの弟分ロン(ウェンバース・リー)が常につきまと
っていて何かとチャンの方でも自分を慕ってくるロンを引き離せないでいた。
ある日、ロンは自殺した少女サンの二通の遺書を拾い……チャンに渡すことに
なる。

その日から……運命の歯車が……取りたて先で知り合った、腎臓病を患う少女
ペン(ネイキー・イム)をも巻き込んで大きく動き出すことになる……。

まだ、この映画を一度観ただけですが……実に編集にムダがありません。省略
技法が非常に上手い作品です。殊に前半のサンの遺書を巡っての展開……一通
目の遺書を受け取った教師は、血染めの遺書を読まぬまま、バラバラにして
風に飛ばし……遺書を持ち帰ったチャンは、何故か飛行機の夢を観て夢精して
しまうのですが……その夢精があったことを、僅か1シーンだけ、パンツを洗
うシーンだけで表現しているのには驚きました。

また、別のカットで夢精シーンの後でパンツを洗うシーンが登場するのですが、
ハンガーに干した後、パンツを冷蔵庫に入れているのですね。これは乾く筈で
すし、確かにヒンヤリとして気持ち良さそうだなぁ……。

そして、そのパンツを冷蔵庫に入れると言う行為によって、この家には母も父
も居ない……残るは彼だけと言う暗示を強く持たせていることに成功しており
ます。

組織のボスから頼まれた殺しを請け負うところ……。一度目は成功のイメージ
ですが……その直後に事実が示される残酷さ。

そして、その失敗により命を狙われ、ゴミ捨て場に投げ出される現実……病院
では、ペンの母と民生委員のリーによって臓器移植が行われるかどうかの談判。
頬がヒリヒリしてきました。

奇跡的に一命を取り留めたチャンが、退院して何を知ったのか?
そして……その為に行なった行為とは……?

この時の顔が……明らかに違うのですね。明らかに「死線」を超えた顔なので
すよ。

しかしながらも……そうした出来事とは別に、時の流れは何ら影響を受けるこ
となく、香港が北京に取り込まれたことを示すラジオの声。

様々な解釈が出来ます。ですが……ぼくが此処で明らかにするのは避けておき
たいのです。何故ならば、日々時々によって、その解釈が別れてくるだろうし、
そのどれもが正しいからなのです。

「大河浪漫を愛する会」大倉 里司(HCD05016@nifty.ne.jp)
(6月27日 銀座テアトル西友にて鑑賞)

BGM:OST『メイド・イン・ホンコン』より『Gun Dance』

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