(闇)『猥褻行為〜キューバ同性愛者強制収容所』

1966年パリ公演をしていたキューバ国立バレエ団のうち10名がフランス
に亡命を申し出た。キューバに戻れば同性愛者への迫害が行われ、強制収容所
入りさせられる為である……。

この監督のネストール・アルメンドロスは、20世紀を代表する撮影監督の一
人であることを否定する方はいらっしゃらないでしょう。1930年スペイン
のバルロナに生まれ、反フランコ側に立った為、キューバに亡命した父を追っ
て48年にキューバ入り。次いでバティスタ政権の独裁悪化に伴いニューヨー
ク→ローマへと住居を替え、カストロ革命直後のキューバに夢と希望を抱いて
戻りますが……夢破れて62年にフランス入り。そこで出会ったのがトリュフ
ォーをはじめとした絢爛豪華な若き巨匠たち。やがて、アメリカにも活動の場
を広げ……93年に波乱に満ちた「大河的人生」を終えられます。

傑作『ノーボディ・リスンド』よりも先に作られたようですが、出来栄えとし
ては此方のほうが凄いと思うんですよ。

『ノーボディ・リスンド』では、ウリャ監督との複眼でしたが、今度は単眼……
よりシャープに迫り、カストロ政権への追及も容赦がありません。『ノーボデ
ィ・リスンド』
では「性差」に拘らない亡命者一同へのドキュメンタリーでし
たが、この作品では、「自分の問題」としての「ホモセクシュアル弾圧」とな
っているのが効いたかも知れません。

マッチョなゲイは警察官として身を隠し……弱々しげな御姐さんが引きたてら
れる世界……まあ、若干の救いがあるのは、現在ニューヨークで美容師をして
いる一人の御姐さんの話でしょうか?
この人……強制収容所に入れられたのは災難だったけど、幸いにして看守の一
人が理解があり……それとなく庇ってくれたようなんですね。(涙)これはレア
・ケースとしても、こうした話の一つでも入れないと陰鬱な話ばかりなんです
よ。12歳の少年が街中で高級将校のオープン・カーに乗って銃で遊んでいる
内に”空中”に発砲。少年を待ち受けていたのは収容所……ですが、ストレー
トの方々の囚人5人にレイプされ、病院入り……やがて、同性愛専門の棟に入
れられた………。
でも……逆に、それのほうが救いがあったかなぁ?と楽観的な見方をするのは
自分だけでしょうか?刑務所内におけるレイプですが、問題を起こしているの
は殆どがストレートの囚人同士なんですよ。性的に屈服させ自分の配下に置く
ことだけが目的で「愛」のかけらもそこには存在しません。

少なくても自分の場合、少年に興味が無いってことも大きいのですが、仮に刑
務所に入っていたいけな少年を見つけても犯そうなんて思わないですもの。嫌
がる相手に対しては醒めてしまうんですよ……自分の場合。(正常時)
ただ……マッチョなお兄さんに手を出して、殺されてしまうパターンはありそ
うだなぁ……(^^ゞ

さて、この映画の眼目は、「何故、独裁政権が同性愛者を迫害するか?」と言
う極めて興味深いところに視点を置いています。

出た結論の一つには……「同性愛者は世間に対して懐疑的であり、それが為政
者にとっては目障り」だそうですが……自分はこの結論では納得は致しません。

ジョージ・オーウェルの『1984年』では無いですが、「憎悪の時間」がど
うしても独裁の為には必要なんです。例えば、ヒトラー、スターリン、毛沢東、
金日成……それぞれに「同性愛者」弾圧の歴史ですが……「眼につきやすく」、
「世間の良識から外れる行為を行なう」が為に格好の材料なんですね。

こと、男性同士の場合「タガ」が緩いでは無いですか……一人の男性と生涯付
き合うと言う「一夫一夫制」で収まるのには、余程のことが無い限り難しく……
それが為に多数の人と寝てしまう……それが「世間の良識から大きく外れる行為」
だとは自覚しているんですが……難しいんですよねぇ(--;)

「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2001年7月19日 東京国際レズビアン&ゲイ映画祭にて鑑賞 スパイラル・ホール)

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