僕は、別段「作家主義」で映画を観るわけではない。見る気になったら観るし、
観たくない作品については、無理をしてまで観るつもりはない。
今回の『メキシコ万歳』も、今回始まっている『メキシコ映画祭』でなければ、
見る気にならなかっただろう。
と、大上段に構えて書いてしまったが、この映画「未完の大傑作」です。(^^)
まず、この映画の助監督を務めた、グレゴリー・アレキサンドロフの登場
から映画は始まります。
彼は、何故、監督であるエイジェンシュテインがメキシコに渡ることにな
ったかを解説します。
そこから繰り広げられるのは、無限大の映像の嵐。ドキュメンタリー調
のものもあれば、ドラマ仕立てのものもある。
「プロローグ」、「サンドンガ」、「フィエスタ」、「マゲイ」、「ソルデダーラ」、
「エピローグ」で構成されているのだが、一番面白くなりそうな「マゲイ」迄
完成させて、「ソルデダーラ」は未完に終わっている。
ディアス大統領統治下に腐敗した地主に陵辱され、監禁された妻、それを
奪還しようとする夫。
夫の試みは一時成功したかの様に思えたが、圧倒的な武器と人員の前に
夫を初めとして加担者はリンチに遭い虐殺される。この映像の見事さ!
次のシーンで、それを知った農奴達の眼が次々と映し出される。
フィルムはここまでしかない。資金難により撮影を中断したそうだが
本当に惜しいことである。
それを補うのは、われわれに残された「想像力」だけである。
6月20日 16:20
『メキシコ映画祭』草月ホールにて
大倉 里司( HCD05016@niftyserve.or.jp)
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