(生)『マイ・リトル・ガーデン』

最近、映画館に行かない為、更新が大幅に遅れております。やはり、ビデオで
観てしまうと………と言う無意識の枷が自分の中にもあるんでしょうねぇ……

さて、本日は、観て即座に書かなければ居られない「名作」と言い切ってしま
える希有な「映画」を観たのです。

全世界で大ベストセラーとなった、ポーランド作家ウリ・オルレブ原作による
『壁のむこうの街/The Island on Bird Street』を基にソーレン・クラウ・
ヤコブセン監督が素晴らしい映画を作り出しました。

第二次大戦下のポーランドにあったユダヤ人ゲットー。ゲシュタポによる「選
別」の魔の手は直ぐにそこまで迫っておりました。何とか第一期は逃れたもの
の、家族か……自分の生命と引き換えにゲシュタポの手先となった協力者の密
告者により、父ステファン(パトリック・バーギン様)、叔父ボルーチ(ジャ
ック・ウォールデン様)が見つかってしまう………。ボルーチの命と引き換え
る様にして、少年アレックス(ジョーダン・キズック”様”)が父と生き別れ
になりながらも、ゲシュタポの手を逃れ、ただ一人残された街で唯一の支えと
なったのは愛読書「ロビンソン・クルーソー」だった。彼は自ら「ロビンソン」
を気取り、機転を利かせた行動で廃墟の中に小さな隠れ家を築き上げる。数ヶ
月間の苦難にもかかわらず、希望を胸に秘め父との再会を祈っていたが………。

この映画の素晴らしさは、「至高とも言うべき完成度の高さ」に集約されてし
まうんですが、「物語」から逃げていないんです。誰も居なくなり………自分
一人だと思っていたゲットー内でも、更に隠れ家に潜んでいる人が居り、その
人達の為に危機に晒されたり………恩恵を被ったりしているんですね。そして、
更に重要な事は、彼の命が誰か他の者の生命と引き換えになっていると言う厳
しい現実があるんです。そして……「心の友」と言うべき白ネズミの”スノー”
も心暖まる緩衝材としての役割だけでなく、物語を進めていく上で必要不可欠
な要因なんです。

そして……しつこく探し回るゲシュタポのみならず、煉瓦で窓を全部覆われた
壁を一つ隔てたところには、通常の街区があり……そこでは人々が「ごく普通
の生活」をしている。大概の作品ですと、優雅な暮らしはゲシュタポの特権と
して描くことが多かっただけに、この視線は鋭く、人間社会におけるごく当た
り前の姿「良い人も居れば、悪い人もいる」それは、ゲットーの中も同じ……。

そうした細部を実に丹念に描いていますし、劇中登場する「医師」のエピソー
ドも「真実の光」に溢れております。台詞一つ一つに強く肯くばかりの説得力
があり、観ている此方側の視線……貴方はどうなんですか?と無言の内に鋭い
刃を突きつけられておりました。

3月に銀座テアトルシネマにてレイト・ショー公開され、早々と5月にはビデ
オ化されてしまった一作ですが、劇場公開させねば為らなかったという配給側
の魂の叫びがテレビモニターの向こうから聞えてきそうな珠玉の名作!

最近のホロコースト物ではダントツの完成度。今年のベスト1候補を揺るがす
作品がもう一つ増えました。必見です!!!!

「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2000年10月18日ビデオにて鑑賞)

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