(空)『俺は、君のためにこそ死ににいく』

時は昭和19年の秋、太平洋戦争で圧倒的に不利な戦況の日
本軍は、米軍のフィリピン攻略を阻止すべく苦渋の選択を強
いられる。それは、少ない戦力の中で敵と戦う最後の手段と
して、戦闘機に250キロの爆弾を搭載して敵艦に体当たり
する特別攻撃隊を編成することだった。そして関大尉らが初
めてこれを決行した。しかし、マニラを陥落した米軍はつい
に日本攻略に手をつけ沖縄に上陸。沖縄を断固として死守す
る為、まもなくして鹿児島県の知覧飛場は陸軍の特攻基地と
なり、そこから439名もの若者たちが飛び立っていくこと
になった。軍指定の富屋食堂を構え、かねがね若き飛行兵た
ちから実母のように慕われていた鳥濱トメ(岸恵子姐さん)
は、二度と帰らない彼らを引き止めることもできず、複雑な
想いを胸に秘め、母親代わりとして慈愛の心で見守り続けて
いく。第71振武隊隊長の中西 (徳重聡さま)は、遺品の郵
送をトメに託した。板東(窪塚洋介さま)は、特攻を志願した
ことを父親に伝えてほしいと懇願。出撃しては基地に戻って
来る田端(筒井道隆さま)は、トメに「日本は負ける」とつぶ
やき、各々、誰にも言えない心の内を告げた。
やがて昭和20年8月15日、終戦。しかし、それで全てが
終わったわけではなかった。トメは特攻で生き残った者たち
の過酷な試練をも、まざまざと目の当たりにすることになっ
たのである……。


延々と粗筋を書き起こしたのですが、この映画の最大の欠点
は誰が誰だか判らない侭、話が進行していってしまうケース
なんですよ。軍事物にありがちなパターンですが、戦闘服を
着て丸刈りなんで、誰が誰だか判らない……。今回の映画も
その欠点を免れることは出来ませんでしたと……言うか、整
理させようとしています?
この映画で描かれていた事は、自分の知っている限り事実に
基づいたものなんですが、今一つ登場人物が絞り込めていな
いと言うか、次から次に隊員が送り込まれるんで、誰が誰
だか完璧に飽和状態に陥っています。
東映では2001年に降旗康男監督に因って、このテーマを
『ホタル』と言う映画にて撮っておりますが、そちらの方が
自分的にはスッと話に入れた感じが致しました。

この映画でも『ホタル』でも「蛍」がある重要なエピソード
を表すのに使われているのです。それは、自分が死んだら蛍
となって戻ってくるからねと約束して旅立ってしまった一人
の隊員の話なんですが……この演出が、頭に来て仕方が無か
ったんです。サラリと流す訳でも無く、仰々しく中途半端に
シーンを描いて現在にフラッシュバックさせるとは何事です
か!一番の肝心要な泣かせのシーンなのに、これでは観客は
戸惑うばかりでございます。

更に在日朝鮮人の金山少尉の扱いも、中途半端でしてどこで
消えたのかが判らないんですねぇ。もし、自分が『ホタル』
を観ていなかったらもう少し甘めの採点でも良かったかも
知れませんが、演出上の不手際が目立つ上に、終戦を迎えた
後の描写も無駄に長い……あと15分位はバッサリと切れた
筈です。そして、何故、彼らは死を選んだのか……。まあ、
この自意識過剰な題名を読めば判ることですが、それをトメ
姐さんに言わせたらイケナイでしょう。
やはり、生き残ってしまった兵士の口からこの言葉は出す
べきでは無かったかと思うんですねぇ……。

思想的云々よりも、映画として観て如何なものかと感じた
本作品。この製作総指揮と脚本を務めた石原慎太郎氏が
『硫黄島からの手紙』を批判したそうですが、もう一度自分
の足下を見つめ直してみたら?

初代「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2007年5月12日ワーナーマイカルシネマズ市川妙典にて苦行)

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