(失)『ペパーミント・キャンディー』

1999年の韓国のとある河川敷。20年ぶりに開かれた同窓会。昔、ピクニ
ックに来た同じ河原に、同僚たちが集まった。久しぶりの再会に興じる仲間を
しり目に、鉄道の高架橋にのぼるヨンホ(ソル・ギョングさま)「昔に帰りた
い」と叫ぶ彼の目の前に、列車が迫ってくる。クローズアップされる最後の顔。
そこから列車の線路に沿うように彼の過去が明らかにされていくのでありました。

観ていてこれほど乗れない為に悲しい思いをした映画は、久しぶりなんです。
現在から過去に溯って一人の男の半生を追うとなれば、正に「ツボ」直撃です
し、「ペパーミント・キャンディー」……「カメラ」と「物」に託した人の想
いと言う御約束事も奇麗に入っています。更に、80年の光州暴動に際しての
戒厳令下において、その後の人生を狂わせるような事件が起きたとなれば……(涙)
の筈なんですが………自分には、全然ダメでした(悲)

出来栄えとしては、良く出来ているし「野心的」な作品だと思うんですよ。
ヨンホと言う男の20年を演じきったソル・ギョングさまの熱演は勿論買いま
すし、監督・脚本を担当されたイ・チャンドンさまも上手いと思います。

目の前で起きている事柄……主人公をはじめ、登場人物たちの行動は理解は
出来ますよ。でもそれは判るけど……でしてそれ以上入ってこないんです。(涙)

まず、説明が極度に省かれているのが乗れない理由その1でして……

工場→軍隊と此処までは判るんですよ。でも、何故刑事に?????????

「親も驚いていたわ」と初恋の人がおっしゃいますが、観ていてこちらも?の
連続。一人の人生を振り返ってみて、そう劇的な事件が起きる訳じゃないのは
良く判るんですが、幾つかの人生をまるで自分が体験するかのように感じさせ
るのが映画の一つの使命だと自分は思うんですね。

だから……何の為に?と言う動機付けが欲しいんです。

そして、乗れない理由その2としては、現在→過去と一直線に向かい、現在と
過去が交錯することが無い。

「無い」と言い切っては失敗かも知れないし、野心的方法だとは思うのですが、
自分に取っては成功しているかとは到底思えないんです。

時制をバラバラにして、それを組み合わせる手法が自分としては好みでありま
したし、少なくともこの映画で一直線路線をやった試みは買いますが、何故今
迄の映画が「時制を分割したのか?」には、それなりの黄金律があったと思う
のですよ。

ところが、この手法だと「謎」ばかりが先行してしまって、答えが出る頃には
熱が醒めてしまっていると言う欠点を生む気がします。

と………この文章を読んで頂ければ判る通り、まるで乗れないし、好きに為り
たいのにつれなく振られてしまった(笑)と言う感じでした。

ただ……一つ感謝すべき点は、公開時から絶賛評が並んだので、今日まで素敵
な夢を見られたことなんです。その点、みなさまには感謝しております。
ありがとう。

「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2001年4月18日 ビデオにて鑑賞)

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