(艶)『レッド・チェリー〜処女の刺青』

某所で一時話題になりました『レッド・チェリー〜処女の刺青』を本日鑑賞致
しました。中国製作で95年の映画であるが、日本のビデオ会社の宣伝の嫌な
ところがあって、如何にも「色物」として売ろうとしているのでして………確
かにエロティックな描写はありますが、「大河浪漫のツボ」を心憎い迄に押さ
えている力作です。

物語の方は1941年のモスクワにて、二人の中国系生徒が学園に編入される。
一人は男の子のルオ、そしてもう一人はチュチュ。何とか学校生活にも慣れ平
穏な生活を送ろうとしていた二人に第二次大戦の闇は、静かに押し寄せるので
あった…。

先ず感心し、驚いたのが、ロシア語と北京語、それにドイツ語の3カ国語が平
行して遣われていて違和感が無いことなのです。
近年では、『レッド・ヴァイオリン』が舞台となる地域と時代に合わせて言語
を変えておりましたが、純然たる中国映画でこれは貴重です。

それと、95年だからと云うこともあるのでしょうが、「革命批判」的なとこ
ろも有るのが、ポイントとしては高めです。二人の生徒を編入するときに旧赤
軍の軍人がこう語ります。

「この子たちが送り返される中国は革命の真っ最中だぞ。そんな危ないところ
に送り返す訳には行かない」(泣)

これを聞いて、「ここまで緩やかになったのかぁ………」と思ったのですね。
「文革批判」は何とか出来ても、「革命」のもたらす危害について暗に語れる
様になったのか………と、ほんの少しですが、感慨を覚えます。

修学旅行の地にて、いきなりドイツ軍に包囲されてしまうチェチェ。それと平
行するかの様にモスクワで難民生活を送るルオ………二つの人生はそれから交
差することなく異なった道を進んでいくのです。

恐らく、ここからの描き方で好き嫌いが分れるだろうと思うのですね………。

と、言うのは、チェチェは親衛隊が接収した修道院に入れられ、元医者の刺青
マニアの将軍に第三帝国の紋章を彫り込まれてしまう………。

片や、ルオの方は、区長に窮地を救われ(このシーンは号泣もの)手紙配達の
仕事を貰うことになる………。

この切り分けが、実話ベースの素材の為、二つの物語が交錯するという盛り上
がりには欠けるものの、少年ルオのエピソードは、泣けるエピソードの綴れ織
り。ことに、目の見えない老婆に向かって「勧進帳」を読み上げるところは涙
無くしては観れません。

『ライフ・イズ・ビューティフル』よりも数段美しい「嘘」なのですよ。\(^0^)/

そして、戦争が終わろうかとしている時、チェチェとルオが再会を果たそうか
と言うその時に迎えた悲劇とは………。

これもまた「真実」の重みがあります。何故ルオがあのような行動に出たのか?

それは劇中では明らかにされておりませんが、それゆえに重い。

この映画を観ていて、一番感覚が似ているなぁと思ったのが、名作『芙蓉鎮』
でラストに見せた歴史感覚なのですね。

ここでは、チェチェの手術を巡っての校長と将校の会話にそれが浮かび上がっ
てきます。

「最悪の事態が去っても、再びこの様な事が起きないとは断言出来ない」と…。

中国人の循環型歴史感覚が良く出ていると思ったのでした。流石に文革で揉ま
れただけあって、経験が生きていますねぇ………(涙)

「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(9月15日ビデオにて鑑賞)

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