(美)『レッド・バイオリン』

すべてのものに……「仏性」は宿っているとぼくは考えておりますが、『レッド・
バイオリン』には……如実にそれが出ておりました。

前に、マダムの方がこの映画について書いて貰ったのですが……今回は男のぼく
の視点から書かせて頂きます。

この映画の欠点は……「幻の名器」であるポープ=レッド・ヴァイオリンの存在
が……この楽器を見ただけでは「ほとけ」が感じられないことと……。ラストに
示される展開だと思いました。

ただね……貴方にも「大切にしているもの」が或る筈なのですよ。或る人にとっ
ては「書籍」であったり……この映画の中では「楽器」であったり……また、ある
人にとっては「絵画」だったり……そして誰からか譲りうけた「形見」だったり
するのです。

物質としての存在もそうですが……そのものを作ったひとの「魂」それを使っ
てきたひとの「魂」が感じとれるかどうか……この映画に共鳴するかどうかは、
一重にこれに掛かっております。

一つのヴァイオリンを巡って繰りひろげられる「愛憎劇」もそうですが、ぼくが
一番凄いなと感じたのは中国のパートなのです。

文化大革命の狂乱の中で、ひとりの女性共産党幹部が自分の立場をも危険に晒
して「一つの楽器」を守ろうとした想い……。
それを受けて……元の仲間が……疑いながらも……彼女の想いが真摯であるこ
とを感じ……「生涯」に渡ってこのヴァイオリンを含めて数多くの楽器を守っ
てきた……。

この真摯なる想い……やはり二度目でも泣けてきます。

物語としても面白いし、映画としての構成力も流石です……ただこの映画が本当に
「腹の中に入るか否か」は……このヴァイオリンに限らず、誰でもそうなのです
が……「一心」に、あるものに「情熱」と「想い」を傾けてきたかどうかに掛か
っております。

その意味で……ぼくは、これは極めて観る人を選ぶ映画だと感じております。

静止したものに「美」を感じ取れるか否かがこの映画の勝負所。
些か突き放した見方かも知れませんが……「分るか……否か」なのですし、この
映画から何も感じ取れなくとも、それはそれでその人は正しいのです。

他の映画から……「魂」の存在を感じて貰えれば、ぼくは満足ですし、必ずそ
うなると思っております。

「大河浪漫を愛する会」 大倉 里司(HCD05016@nifty.ne.jp)
(5月30日 シネ・シャンテ1にて鑑賞)

BGM:OST:『レッド・ヴァイオリン』

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