(角)『力道山』

1944年。貧困の祖国を離れ、いい暮らしを夢見て相撲取
りになるため、単身日本に渡ってきたシルラク(ソル・ギョ
ングさま)。だがそこは先輩力士からの陰惨な苛めに耐え忍
ぶ辛い日々が待っていた。そんなある日、大興行主であり、
力士のタニマチである菅野(藤竜也さま(*^^*)ポッ)の世話
で座敷に上がる芸妓の綾(中谷美紀御嬢様)と出会う。身寄
りのないもの同士深い愛情で結ばれていく二人。心の支えを
得たシルラクは、力士「力道山」となり関脇にまで登り詰め
る。順調に綱取りを目指す力道山であったが、そこには目に
見えない民族の壁が立ちふさがっていた。関脇から大関昇進
は確実と思われていたのだが、「在日朝鮮人」と言うことも
あり却下されてしまう。そんな時、プロレスと運命的に出会
った彼は、渡米しレスラーへと転身する。2年後には、日本
で初のプロレス興行を成功させ、ヒーローとして日本中を熱
狂させるが、その人生は徐々に狂い始めていく……。

力道山……名前だけは知っています。ただ、自分は昔から
格闘技ってものが好きでは無いので、この映画に描かれた
どこまでが事実で、どこからが創作なのか?その部分は判り
ません。その上で読んでおいて下さい。

まず、この映画を観て驚かされるのは、ソル・ギョングさま
の見事な肉体改造ぶりと、全編殆ど日本語と言う台詞を吹き
替え無しで演じてしまっていると言うこと。
発音その他に若干の癖はありますが、半島から10年前に
渡ってきた朝鮮人と言う設定であるならば、これもクリアー
出来ております。そして、昭和20年代〜30年代の風俗が
これまた巧みに再現されているのにはまたまた仰天。

伝記映画と言うジャンルの場合、何処までが事実でどこからが
創作なのか?と言う事が大きな壁になるんですが、この映画
で描かれている彼の事が「事実」であるならば、全く廻りに
いる人は大変だっただろうなぁ……と思います。

「在日」と言うハンデを背負い、単身アメリカに渡米し「ア
メリカン・ドリーム」の洗礼を一身に浴びた男。そう考える
と「根無し草」故に「絶対的な強さ」を渇望する気持ちが生
まれてきても何の不思議も無いと思います。

ただ日本は、「和」の世界。「角」が立つことを極度に嫌う
社会でした。大興行主である菅野会長も「極道」スレスレの
「興行」と言う世界に足を踏み入れているが故に人間関係の
「和」に因って「権勢」と「財力」を手に入れた存在。
対して、力道山の場合は、「理」と「利」に走り、「角」を
立てまくって「栄光」を手に入れた存在。

尽く対照的な二人の男の間で苦しむのが、奥様である綾と、
菅野の配慮に因ってマネージャーに任命された吉町(萩原聖
人さま)でして、夫の成功と共に夫婦生活が破綻していく姿
と親分である菅野の指令を既に遂行し、力道山本人からも、
自分からは離れた方が良いと諭されながらも最後迄行動を
共にする吉町……。

実を言えば、この力道山と言う超強烈なキャラクターに何故
理知的な吉町が心底惚れこんだのか?息子の誕生日を覚えて
いた事の他に何かもう一つ、エピソードが欲しかったなぁ…
と言うのが本音であり、これがこの映画の疵と言えば疵に
なるんでしょうか?

ここのところをもう少し掘り下げてくれれば「傑作」になり
得たかも知れないと思うと少し残念であります。

最後になりますが、プロレスラー出身の方(?)が大挙出演
されているこの映画。やはり、力道山と言う存在はリスペクト
される存在だったのだなぁ……と再実感致しました。

初代「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2006年3月12日 ワーナーマイカルシネマズ市川妙典にて鑑賞)

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