(母)『ロングウォーク・ホーム』

一人の黒人女性が、バスの前方より運賃を払い、後部の扉より乗車をした。
後部座席は既に満席、彼女が目を前方に向けると、そこは空席だらけの白人
席であった………。そして、彼女は白人席に座り、投獄された。

1955年12月1日に、ルイジアナ州モンゴメリーに起きた一つの事件が元で
今迄欝屈していた公民権運動の火蓋が切られました。

この映画は、同じ時期をアラバマ州のある町を舞台に二人の女性の姿を的確に
描写しております。

片や黒人のメイド(ウーピー・ゴールドバーグ)、もう一人は彼女を雇っている
白人女性(シーシー・スペイセク)立場こそ違えど、二人とも女性であることに
は、変わりは有りません。

盛り上がりを見せる公民権運動に対して、白人男性達は集会を開き、彼女の夫も
最初は無関心だったものの、保守的な弟の工作と影響によって、段々と対立する
側に陥っていく。その構図が鮮やかに描かれていると感じました。

弟はこう囁きます。

「公民権運動に関わる奴は皆共産主義者だ」

正に、アメリカ合衆国にとっては「錦の御旗」の御言葉。それに弟が紹介する
「利権」と「人脈」これに対しての反論を兄であり、夫は持たなかった。

公民権運動で行ったことは、バスの「ボイコット」運動でした。ですが、メイド
の彼女は勤め先に通うまで遠い道のりを徒歩で歩かなくてはなりません。
何でも無いような描写ですが、こうした小さな描写を織り込むことに因って、
「映画」としての力が強くなるのです。家に帰った彼女が靴を脱ぐと、血豆が破
れた跡が靴下に付いている。クリスマスに雇い主の娘に小さなプレゼントを手渡
そうとした時、その子が縫いぐるみを持ってはしゃいでいるのを見て、そっと
エプロンに隠す。心憎いまでの演出です。

雇い主の方は、彼女が居ない事には話に成らないし、また夫に彼女の送迎をして
いる事が発覚し、彼女は生活こそ安定しているものの、自分もまた「檻」の中に
居た事に気づかされます。

女二人が静かな、しかし確固たる戦いに出たのは、その頃でした。
公民権運動へ参加する人達の為の足の便を確保する為に、彼女は自分の車を
提供します。見つかれば間違いなく私刑を受けるべき行為。

やっぱり、こうした行為は小さな一歩から始めなくては行けないなぁと、妙に
感心し、公民権を得る為に歩んできた長い道のりに涙したのでした。
何事も初心忘れるべからずでしょうね………………。(^^ゞ

「大河ロマンを愛する会」 大倉 里司(HCD05016@nifty-serve.or.jp)

BGM:ネヴィル・ブラザース『シスター・ローザ』

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