(扉)『ロルカ〜暗殺の丘』

スペイン市民戦争は、内戦後……40年を経てやっと和解の祭典が行われる程
に深い傷跡を残しました。これから紹介する『ロルカ〜暗殺の丘』もスペイン
の天才詩人ガルシア・ロルカ様の「暗殺」を巡っていくつもの「真実」が交錯
する力作と為りました……。

時は1934年のマドリッド。リカルド少年とホルヘ少年は両親と共にロルカ
の戯曲『イェルマ』の初回に立ち会い、リカルド少年は、こっそりと舞台裏に
侵入し、敬愛するロルカ(アンディ・ガルシア様)に『ジプシー詩集』へのサ
インを頼む。そのときロルカがリカルド少年に告げた言葉「僕を忘れないで……」
がその後の運命を握っているとは誰も予想していなかった。

その二年後……グラナダにも政変の嵐が立ち込め、そうした最中忠告を破って
ロルカが生まれ故郷であった当地を訪れる。「僕を忘れないで」の言葉通りに
リカルド少年とホルヘ少年は、ロルカが滞在している酒場を訪れるが……彼の
姿はとうに無く、代わりにフランコ軍が居た。逃げ惑う市民。やがて、ホルヘ
少年も動乱の最中に誤射によって殺されてしまう。

そして、ロルカがグラナダの丘で暗殺されたのも、その日の夜の出来事だった。
リカルド一家は政変を避けプエルトリコへ亡命する決意を固める。

そして……18年の歳月が過ぎ、ジャーナリストとなったリカルド(イーサイ
・モラレス様)は、謎に包まれたロルカの死の謎を解く為に、父ヴィンセンテ
(エウセビオ・ラサーロ様)の反対を押しきってフランコ政権下のスペインを
訪れるのだが……

ミステリーとしては、多々難点がありますが、この映画にはそれを補って余り
在る「情熱」と「悲哀」がふんだんに盛り込まれております。

何と言っても、少年リカルドとロルカとの出合いのシーンが、非常に生きてい
るんですよ。ロルカは小さな崇拝者に対して「かつての自分」を投影していた
のでしょうし、リカルド少年は、ロルカの死の謎を解くことこそが彼に対して
の恩返しであり、自分自身、そしてスペイン市民戦争への再確認作業となって
いくところが上手い!

ロルカが、リカルド少年に語った言葉である「僕を忘れないで」が、ラストに
なってどれほどの重みを持って迫ってくるか……(涙)

内戦終結18年の月日が経過したとは言え、「暴いては為らない秘密」が人そ
れぞれにあって、善意で行動したことが思わぬ悲劇を生んだり……そうした
「事実」が、見ていた「当事者」によって万華鏡の様に違った側面を見せると
ころ等は、大河浪漫としての王道中の王道。本当に重い「真実」であり、リカ
ルドもそれを背負って生きて行かねば為らない現実があるのです。

歴史の扉を開いてゆく映画としては、屈指の出来栄えでしょう。現代史に関心
がある御方ならば絶対に観て頂きたい一本として強く推薦させて頂きます。

「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2000年1月24日 日比谷シャンテシネ1にて鑑賞)

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