(賭)『ラウンダース』

この映画の感触は?何と表現すれば良いのだろうか……。
一番近い感触が、ヘイウッド・グールド原作の『カクテル』を読んだ時の感触
である。間違っても「映画」の方だとは思わないで頂きたい。此れほど原作と
映画がまるで違う話も珍しいのだ……。

で……今回の『ラウンダース』は、そうした軽めの犯罪風俗小説に青春物の味
付けをして……料理で言えば、御通しにホヤが出てきた様な粋な風味がするん
ですねぇ……。

ウニの様に濃厚では無く、またエビやカニの様に「万人受け」する味では無い。
しかし、独特の磯臭さにも似たマット・デイモン君の青臭さと相まって、虫も
殺せぬ様なベビー・フェイスを逆手に取って、カモから金を巻き上げ、その金
を学費につぎ込む「勤労学生」なのですねぇ……(感心)

博打の世界は、僕も外から垣間見ているだけなのですがこの映画には、そうし
た処から発する「匂い」が濃厚に漂ってくるんですね……。

とは言え、一応、「青春物」ですから、派手な会話は無し……その分を主人公
マイクの独白で補っているのが優れもの。

ただ、派手な会話は無いものの、セリフは、ホヤの身の様にするりと口に入り
「コリッ」と噛むと、音がする……

悪友(と言うか疫病神(^^ゞ)を演じた、エドワード・ノートン様が演じた
ワームと言うキャラクターが、マイクとは対照的なのが定番とは言え面白い。
此れほど迄に、我が侭で、人の事を気にせず、強がっているんですが、臆病
で逃げ回っていると言う余りに僕に似たキャラクター造形には恐れ入りました。

そして、御大ジョン・マルコヴィチ様が演じる、ロシアン・マフィアとも繋が
りがあるKGBと言う男の「色」と「艶」……(*^_^*)(ポッ)
地下にある違法カジノの換金所の奥にさりげなく、イコンが置かれている冒頭
シーンだけで、ああ、ロシア人だな……と解らせる舞台装置の妙。

ヒロイン……と言うよりは、単にマットの恋人の付け足し的存在(これで良い
のです)ジルを演じたグレッチェン・モル御嬢様が、法学生と言う言わば堅気
の存在でありながら、マットが博打をしたのでは……と疑い、札束を発見……
無言で洗面台の鏡に置くところ……。
そして、彼女がブロンドで、しかもハスキー・ヴォイスと言うところが、「犯
罪映画」の定石を踏みながらも、意図的に外しているところは正に「確信犯」(^^)

『もう一度、殺して』で僕を悩殺させ、『アンフォゲッタブル』でガッカリさ
せた、ジョン・ダール監督の三度目の正直と言うべき佳作でした。

ただ、「ホヤ」ですので、御口に合わない人が多いでしょうが、好き者には言
うに言われぬ味わいがあるんですよね……(*^_^*)

「大河浪漫を愛する会」 大倉 里司(HCD05016@nifty.ne.jp)
(5月12日 ワーナー・マイカル・シネマズ 市川妙典3にて鑑賞)

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