(愚)『英雄の条件』

イエメンでアメリカ大使館が、大規模なデモ隊に包囲された。ムーラン大使
(ベン・キングズレー様)とその家族に身の危険が迫る中、チルダース大佐
(サミュエル・L・ジャクソン様)率いた米軍海兵隊による救出作戦が決行さ
れた。その決死の作戦は、成功に終わったが、83名もの一般市民が海兵
隊の無差別銃撃によって死亡。この事件は、全世界を揺るがせ、人道主義
を踏みにじる行為として非難される悪夢の象徴となった。そして、全世界注視
のもと、発砲命令を出した男の軍事裁判が始まった。彼の弁護を引き受けた
のは、28年来の戦友……ベトナムでチルダースに因って一命を救われた、
ホッジス大佐(トミー・リー・ジョーンズ様)だったが………


何でこんなものを作るのかねぇ………と思った一編。確かに「交戦権」と、
28年間経っても失われていなかった「海兵隊員」の男の友情……これは、
確かに上手に描けば、一つだけで美味しい素材ですし、二つの世界が融合
すれば「傑作」と言える可能性もあったかも知れない(あくまで仮定の話)
この手のドラマとしては、ネルソン・デミルの『誓約』と言う大傑作小説が
あり(文春文庫刊)それを期待していたんですが………期待しただけ無駄
に終ってしまったと言うのが正直な実感。

田中昭成様が非常に上手くこの映画の欠点を述べておられるので此方を読んで
頂くとして……まあ、重複する個所もあるかと思いますが、御容赦下さい。m(__)m


まず、冒頭から……何じゃこりゃ?なんですわ。(--;)



(以下、内容に触れています)








二十八年前……少尉の墓場と言われたヴェトナムの激戦地で二手に別れたホッ
ジスとチルダース。この二手に別れたことによって運命は大きく別れるのであ
りました。沼地に向かったホッジス一行は、ベトコンの射撃を受け殲滅、救援
を求める生き残りホッジス……さて、戦友を救い出すためにベトコン側の司令
官であったタオ大佐の副官に銃を突き付け、沼地での射撃を止める様にと促す
強硬派のチルダース……やがて、副官を射殺……恐れ慄いたタオ大佐は射撃の
中止を命じる……。

ここで、ジュネーブ第三条約(捕虜条約)に登場願います。

ジュネーブ第三条約 第十七条……「捕虜からいかなる種類の情報を得るため
にも、これに肉体的又は精神的拷問その他の強制を加えてはならない……」

実際の戦場で守られているかは、別としても……守りたい項目であります。
が……この映画のように、ここまで堂々と掟破りをしているのはどうしたも
のか?

更に……これが激怒したのですが、後の軍事法廷で検察側の証人として、御丁
寧にタオ大佐を登場させ……一件落着……シャンシャンシャンの後に、敬礼ま
でさせている恐るべき無神経さ。アメリカに居住しているのは判りますし、娘
さんも居りますよねぇ……で、法廷で「自分も逆の立場だったら同じことをし
た」と言わせているのも良い……が、これで総べてぶち壊しなんです。(怒)
二回目観たときに……「口アングリ」の世界ですわぁ……和解させるのは良い
けれど、プロセスってもんがあるでしょうが……(--;)


理解不能のシーンは続きます。(笑)ベトナムを遠く離れてイエメンへ(^^)/~

冒頭から米国大使館に対しての抗議デモ……なにやら殺伐とした空気。(^^ゞ
で……何でデモをやるの?????????????????????
それが、最後迄明らかにされないんです。(爆風〜〜〜〜)
それがまた、御丁寧にも射撃手は居るわ……その射撃手は救援ヘリに発砲する
わ……(笑)

あのねぇ……理由は置いておいても?大使を追い出せれば良いんでしょう?
お迎えのヘリ迄撃つとは、一体どうした訳なんでしょうか????????

まだまだ続きます(笑)銃撃された星条旗を畳んで手渡しし、大使をヘリで脱出
させます。(^^)/~で……そのあとに、チラリと下を見て(このシーンはありま
した)銃撃を命じるチルダース大佐。

まあ………これだけだったら良しと致しましょう。発砲し国際問題へ……
激怒する大統領安全保障担当補佐官(ブルース・グリーンウッド様)彼の元に
一本のビデオ・テープが届き、それはチルダース大佐の言い分と合致していた。

これが最大の疑問点ですが……何故か、彼は暖炉でテープを燃やしてしまう。

何ででしょうか????100年経っても解明されない謎が残ります。これを
公表すれば、ヘーグ陸戦法規にもなんら反するものでもありませんし、国際世
論も納得(^^)(^^)(^^)の世界だった筈です。

さて……一挙に軍事法廷へ……ビッグス少佐(ガイ・ピアース様(*^_^*)(ポッ))
が可愛いから観れたようなシーンです。

またまた立腹シーンが登場です。検察、弁護側両方から尋問を受けるイエメン
の医師がおりますが、彼の使い方なんですわ。銃撃を受けた者の診察並びに
治療を施しておりますが……この病院には、赤三日月が貼られております。
これ……イスラーム世界における赤十字でして、この意匠は国際赤十字社から
の認定を受けているものです。

そうした教養ある医師にイスラーム過激派のテープを訳させ……「自分は無関
係だ」(涙)と語らせる必要がどこにあるんでしょうか?

映画全般の中でも、これが一番腹が立ったシーンですし、「全てのアメリカ人
を殺せ!」と言うスローガンがイスラーム過激派のテープに収められていると
しても、米国の中東政策から観れば自業自得ですし、「国から出ていけ!」と
言うスローガンは言ってもおかしく無いのですが、幾ら「根源派」(ウスーリ
ユーン)でも「全員殺せ!」とテープに入れて流通させているとは信じ難いで
す。(怒)そして、関係無い人も「イスラーム」だから、と偏見の眼差しを向
ける視線が傲慢そのもの!

米国海兵隊員出身のジェームズ・ウェッブ元海軍長官が原案を書かれたとの事
ですが……海兵隊特有の「帰属意識」が裏目に出てしまった究極の愚作として
永久に名を留めることでしょう。

「裁判映画友の会」広報担当 大倉 里司
(2000年8月31日 渋谷東急2で鑑賞)
(2000年9月10日 ワーナーマイカルズ 市川妙典スクリーン4にて鑑賞)

田中昭成様のページにある『英雄の条件』評(実に的確に書けています)

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