(廓)『千と千尋の神隠し』

トンネルのむこうは、不思議の町でした………。ここは、郊外にある住宅地
の横にあった人間には見えない町。大和に仏教が渡来する前からこの国に棲
む霊々が病気と傷を癒しに通う温泉町。少女、千尋が迷い込んだのは、そんな
人間が入ってはいけない世界。

父親と母親が豚にされてしまった今、この町で千尋が生き延びる条件は、町の
中心部にある湯屋である「油屋」の強欲魔女の「湯屋婆」のもとで働くことだ
けしかありませんでした………。

この映画は、色々なテーマを含んでいると思うんですよ。まず、みなさまが挙
げるのは現世とあの世を繋ぐ「不思議感」とでも申しましょうか?人間の登場
人物が殆ど居ない訳ですから……登場するは皆……神様!
「御客様は神様です♪」と名文句を言ったのは、三波春夫でございます。(寒)

「神様」とは、日本においては、「とても優れた存在の人」を指すこともあり
ますねぇ……まあ、八百万の神様がいらっしゃる(どう考えても、当時の人口
よりも神様のほうが多い(^^;;)

余談はこの位にして「生きる」こととか、親子関係……自然と人間の共存関係
神様と人間の関係……と色々とあるでしょうが……自分が着目したのはそんな
メジャーなところではありません。(笑)

『もののけ姫』は、自分にはホントに良く判ったテーマなんですが、今回は、
正直言えばピンと来なかったのですよ……
であれば、どこに着目したか……と言えば、意外と言えば意外。当然と言えば
当然なんですが「湯屋」なんですねぇ。
この「湯屋」が、まるで一つの有機体のような活動をしているのが魅力なんで
す。即ち宮崎版『タイタニック』(断言できるかなぁ……(^^ゞ)
あの映画でも、この映画でも「ボイラー室」の描写が何という「愉悦」に溢れ
ていることか……

釜爺が「湯札」の注文を受けて……コークスを使い御湯の調整を行ない、各風
呂に御湯を流し込む。そして厨房では、「宴」の準備で漆器の椀に汁物、煮付
を仕込み、女中さんが廊下を駆けずり廻る。吹き抜けになった館内では、上下
が全て見渡せる光景……襖には金無垢であしらった紅白の芙蓉の花。座敷には
色絵大皿の伊万里……ゾクゾクするほどの官能性です。

一応、「家族対象」の映画ですから、「湯屋」という当たり障りの無い表現を
用いておりますが、これは「遊郭」以外の何者でもありません\(^0^)/
「廓」に来る御大尽として、「カオナシ」というキャラクターが居りますが、
これと「湯屋婆」が、唯一興味を惹いたキャラでして、二人に共通するものは、
「あるものは皆欲しい」と言うことなんですねぇ……。ただ、何故求めるのか?
と言う「動機」の部分が全然異なるんです……。

「カオナシ」の場合は、自分には何も無いということが判っていて「歓心」を
買うために砂金を出したり、喋るためにみなさまを呑み込んだりしてしまう……
言わば「孤独感」を埋め合わせるために「あるものは皆欲しい」と繋がります。

ところが「湯屋婆」の場合は、「強欲」なんですねぇ……どれをどうやって手
に入れたら良いかは判ってそれを実行する形のタイプです。ですが……此方も
「上限」が無い……「孤独感」というよりも「自己愛」が強いタイプでしょう。
その双子のキャラとして「銭婆」という姉が登場しますが、これが同じ血を分
けたとは思えない程に「品」が良いんですねぇ……。
で……そこで「カオナシ」は、安住の地を見つけるのですが……これって何だ
か判るんですわ。
「身を捨ててこそ浮かぶ瀬あれ」では無いですが、全てを求めていては「平安」
は得られず、「安心」こそが一番貴いものとして解釈した次第です……。

「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2001年8月3日 ワーナーマイカルシネマズ市川妙典スクリーン6にて鑑賞)

 

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