(合)『シュリ』

御隣の国韓国では、何故か「男前」と言うよりも、「普通の容貌」をした俳優
がスターになる傾向が強い。アン・ソンギ様もごく普通の方ですし、今回の主
役を務めたハン・ソッキュ様もそうなのです。同じ東アジア圏でも香港とはそ
こが違う。その為、映画自体は良く出来ていても、中高年層のファンの方が多
く付く傾向がありましたが、これから紹介する『シュリ』は聖林でも年に3、
4本出るか出ないか位のクオリティがあります。

結婚を目前に控えた韓国国家保安局の敏腕室長ジュンウォン(ハン・ソッキュ
様)は、最近頻発する暗殺事件に、以前から部署を挙げて追っている北朝鮮第
八局の凄腕工作員イ・バンビの影を嗅ぎ付けていた……。そして、自分の身に
危険が迫ったとき、婚約者のミョンヒン(キム・ユンジン御嬢様)の身の安全
を確保する為にホテルに匿うけれども、どこか彼女の様子がいつもと違ってい
た……。そんな葛藤の中、発見不可能な液体爆弾CTX強奪計画が北朝鮮第八
局によって進められているのを知る………どこで爆発するのか?そして彼等の
真の目的とは……?

とにかく映像のキレが抜群に良いんですね。過去の暗殺事件を説明するシーン
があるのですが、タン・ピン・シャンと映像で畳み掛ける手法には、聖林のア
クション物を見慣れた観客ですら「おおっ!」と唸ること間違い無し。

そして、編集もさることながら、脚本の妙……大体こうなるだろうなぁ……
でも………あれは?と観客が思いかけた時点でその盲点を潰してゆく手法は並
大抵のものではありません。

舞台挨拶の席でカン・ジェギュ監督が「今迄の韓国映画は観客が何を欲してい
るか考えずに、自分の撮りたいものを撮っていた………」と言っていたのには、
最初………(--;)と思ったのですが、これを観たら文句は言えません。m(__)m

映像のキレと脚本の妙もさることながら、技術だけでは補えない「情」がこの
映画には満ちております。
南北分断から五十年が過ぎようとしている朝鮮戦争の傷が未だ痛みとして残っ
ている………本来敵役の北朝鮮第八局の頭、パク・ムヨン(チェ・ミンスク様)
にも、「そうぜさるを得なかった」立派な動機があるんです。

南北の工作員達が繰り広げる銃撃戦は、文字通り涙無くしては観られない悲痛
な痛みが満ちているんですね。
一昔前のアクション映画だったら、味方側しか映していなかったのを、この映
画では、北鮮側からの視線でカメラを置くことに因って、どちらも残虐である
ことを映し出すことに成功しておりますし、本来分断さえ無ければ闘い合うこ
とが無かった関係………正に民族の痛みを力強く描き切っております。

第12回東京国際映画祭での、ひとつの大きな収穫が、この『シュリ』である
ことは間違いの無いことでしょう。

来年公開の予定なので、主義主張に関係なく、皆様に是非一見を強く推奨させ
て頂きます。

「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(11月6日第12回東京国際映画祭特別招待作品)

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