(怨)『私家版』

97年度のベスト10企画が目下行われており、僕自身もある程度
投票の配分を決めてはいたが、その順位を大きく狂わせる一作が
登場した。『私家版』がそうである。

もう、あらかたの方は御存知だとは思うが、僕自身非常に「闇」が
深い、自意識過剰とも言える男である。
それが為に、「復讐物」には人一倍興味を示し、それなりに読んで
来たし、映画を観てきた自負がある。

僕にとっての「復讐物」のベストを、挙げるのならば、次のような作品
になる。

☆アレキサンドル・デュマ『モンテ・クリスト伯』
☆シドニィ・シェルドン『真夜中の向こう側』(映画版は×)
☆バルザック『従姉ベッド』
☆コーネル・ウーリッチ『黒衣の花嫁』(映画版も◎)
☆キャサリン・ハーヴェイ『バタフライ』
☆ブライアン・ガーフィールド『狼よさらば』(映画版も◎)
☆ラクロ『危険な関係』(映画版(とりわけフリアーズ版が◎)
☆ジャスティン・スコット『シップキラー』
☆エリザベス・ゲイジ『真夜中の瞳』
☆V・C・アンドリュース『屋根裏部屋の花たち』&『炎に舞う花びら』

そして、この『私家版』もこの一列に加えるべき作品であると考える。
復讐の手口の巧妙さと良い、時間の経過と良い、かなり上位にラン
キングされるべき作品であることは疑いの余地が無い。

何よりも驚いたのが、この映画、90分を切っていることである。
監督・脚本を書いたベルナール・ラップ様は、この映画が初監督
らしいが、とんでもない才能の持ち主である。
無駄を一切排し、脚本だけで9バージョンを書き上げ、それを選考
し、編集の時点で切り込みを入れて、本当にクオリティの高い作品
に仕上げている。

配役の方も然り。

編集者と紹介されているが、(実際は出版エージェント)のエドワード・
ラム卿を演じているのがテレンス・スタンプ様、エゴの化け物の様な
作家(実際に多いんですよ)ニコラ・ファブリを演じているのが、
ダニエル・メスギッシュ様、彼との仇敵の書評家ナンシー・ピックフォード
を演じているのが、『パルプ・フィクション』でも強烈な印象を残した
マリア・デ・メデイルシュ様。

これらの配役が一人でも狂ったら、作品としての価値は大幅に下がる
ことでしょう。見事な組み合わせで、感心します。

これを観終わったあと、僕は伊勢丹に寄って、シャンパン・グラス一つ
と、モエ・ド・シャンドンのハーフ・ボトルを買った………。
そして、自宅にて、この作品と巡り合えたことの喜びと復讐の苦さを
噛み締めながら祝杯を上げた。

大倉 里司(HCD05016@nifty-serve.or.jp)

BGM:オリジナル・サウンド・トラック『私家版』

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