(善)『マリアの息子』

何も起きないことが、これほど迄に幸福な時間だったのか?と感じさせてくれ
る嬉しい映画です。

物語は単純で、上映時間も71分と短め………ですが、これを見終わったあと
には、2時間30分の充実した映画を観たかの様な幸福感がありました。(^^)

主人公ラーマンは、イスラム教徒でモスクでコーランを詠唱する可愛い少年。
彼は祖母と父と共に暮らしていたが、実は母の顔を知らなかった。そんな彼が
牛乳配達をしているとき、村に一つだけあるカソリックの教会で、聖母マリア
像を見た時、無意識の内に母親の姿を投影していた………。年老いた神父が事
故で倒れたとき、彼と盲目の友人ダーウードは、ある一つの決意をする………
それは、神父の頼みである弟を探す役割だった。

何でも無い描写が淡々と続くと、ぼくは眠たくなる性質ですが、この映画は数
少ない例外。淡々としながらも、老神父が梯子を登るところなど、なまじっか
のサスペンス映画よりも遥かにスリリング………イスラム教徒ばかりの村であ
りながらも、村人が神父に敬意を払っているところも極めてポイントが高い(^^)

中でも泣けてくるのが、イスラム教徒の先生が、これからやろうとしている神
父の弟探しについて「善行だからやりなさい」と励ましを与えるところ……こ
れには、滂沱の涙。

そうして、ラーマン少年は、街に出て神父の弟探しをはじめるのですが、可愛
い上に……行いが立派だから、感情移入しまくり!(^o^)

ホントに見つかってくれよ………駄目なの(くすん)………「何やっているの?」
………「神父さんを探しているの………」と言う行動に一喜一憂………見つかる
だろうなぁ………?と解っていてもスリル満点の描写が続きます。

そして、ラーマン達が迎える………ある真実とは?(感涙)ありふれた結末な
がらも、おおっ!と嬉し涙の連発!

この映画にも、ティーチ・インがありまして、病を推して出てきたハミド・ジ
ェベリ監督が語るところによれば、何と!出演者全員が素人!(驚愕)自然に
演じることを何の衒いもなくやってのけ、それを実感出来た素晴らしさ。

『アローン〜ひとり』も良い映画ながら、日本公開未定ですが、もう一度どち
らかしか観れないと為れば、ぼくとしては『マリアの息子』の方を選ぶと思います。

「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(11月4日第12回東京国際映画祭・インターナショナル・コンペティション)

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