(雅)『ムッソリーニとお茶を』

皆様、御機嫌如何でいらつしやひますでせうか?わたくし、マダム・DEEP
で御座ひます。

この度、五人の淑女の方々が織り成す極上の時間を過ごして参りましたの。
物語の方は、第弐次大戦前夜の伊太利亜の古都フィレンツエで、ウッフィ美術館
等で優雅に御茶を楽しんで時間を過ごされてゐた参人の英国婦人と弐人の亜米利
加婦人………そして、その狭間で翻弄される少年ルカ様の成長記なので御座ひます。

わたくしが、あれやこれや筋書きを述べるよりも、御出演為さつた方々を述べて
いつた方が、凄さが判るものと存じます。

ルカを幼少期から祖母的な眼差しで擁護するメアリー様には、サー・ローレンス
・オリビエ様の未亡人ジョーン・プローライト様、仔犬と古美術に造詣と愛着が
深ひアナベラ様には、ディム・ジュディ・デンチ様、「蠍族」と名指しされ、英
国人社交界を牛耳るレディ・ヘスター様には、ディム・マギー・スミス様。対し
て亜米利加側では、ルカの母と親交を持つてゐて、大女優のエルサ様にはシェー
ル様、百合の香り漂ふ考古学者ジョージー様には、リリー・トムリン様………。

わたくし、予告並びにポスタアでこの配役を見たときは、我が目を疑ひましたわ。
良くもこれだけ揃つたものだと。ゑゑ

その五人の淑女に囲まれて御育ちになるルカ様には、幼少期の時分には、ヘン
リー・ルーカス様、十代になつて「殿御」の匂ひを漂わせるのを演じてゐるのが、
これが映画初出演のベアード・ウォレス様。で………幼少時代は伊太利亜映画の
十八番的技巧で涙を絞らせ、少年から青年へと段々と瑞々しさを出してゆく過程
は心憎ひばかりで御座ひまして、ハンケチを片時も手から離すことが出来ません
のよ。

ほんの些細な描写にも、戦雲と圧政の黒ひ霧が立ち込め、「わたくしが御茶を
楽しめれば、世界がどふなろうが構ひませんことよ」とやう気持ちでゐたのも、
呆気なく崩れ去つてしまふ凄みが御座ひます。

配役で申せば、五人の淑女の方々は、どれもこれも魅惑的(うつとり)正しき、
女御の道を指し示してゐるやうに感じますし、とりわけ、ディム・ジュディ・
デンチ様の発音の美しさは、それだけで官能。ディム・マギー・スミス様も最
近は軽妙な役廻りが多かつた気が致しますが、今回は或る意味で高慢でもあり、
見方を変へれば深窓の令嬢風の御婦人を的確に演じておられ、正に圧巻。シェ
ール様の夜会服に身を纏つた御姿のあでやかさ、ジョーン・プローライト様の
一番頼り無さそふに見へながらも、実はがつしりと押へ込んでゐる存在感。リ
リー・トムリン様には、権威に対する反逆と、それに打ち克つだけの知性が御
在りなのでせう。

これは、優雅さを求めて止まなひ女御には必見の映画とわたくしは、確信を持
ちまして推薦出来るものとして此方に筆を置かせて頂きますわね。(につこり)

「裏社交界の徒花」 マダム・DEEP
(2000年6月7日 日比谷シャンテシネ2にて鑑賞)

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