(因)『レッド・アフガン』

実は密かに思っていることがありまして、もし、テレンス・マリックがあと
10年早く『シン・レッド・ライン』を作っていたとしたら、主人公の一人で
あるウィット君(ジム・カヴィーゼル様)は、ジェイソン・パトリック様が演じ
て居たのではなかろうか?と思うんですよ……。
ジム・カヴィーゼル様と違って、ジェイソン・パトリック様の声質は異なり
ますが、「眼」が御二人とも非常に澄んでいて「純粋な魂」の持ち主だろう
なぁ……と感じているんです。

旧ソ連軍のアフガニスタン侵略下、とある村を赤軍の戦車部隊が急襲し、
村を壊滅に追い込んだ。だが……根っからの軍人ダスカル隊長(ジョージ・
ベンザ様)と元情報部に居て上官に反抗した旨で前線に送られたコペチェ
ンコ運転士(ジェイソン・パトリック様)は激しく対立。ダスカル隊長は、無断
で通訳を殺害したことから二人の関係はこれ以上無い程悪化していった。
やがて……ダスカル隊長が仕組んだ非情な作戦とは………。

色々な方から「傑作」との評を聞いていたのですが、ホントにその通りでして
低予算であるにも係わらず優れた戦争映画が出来るのだと言う御手本的
な存在です。

戦車部隊と言っても、実際に出てくるのが一台だけでして、それをカメラの
アングルを変えることにより圧倒的な威圧感を感じるのですね。
『Uボート』が潜水艦の中の閉塞感を出した映画の金字塔的存在ならば、
この、『レッド・アフガン』は戦車の中での閉塞感を出した金字塔と言っても
過言では無い気が致します。

ダスカル隊長も有能な軍人でありながら、独ソ線でスターリングラードの戦
いを僅か8歳の時に行い、親兄弟が尽く戦死してしまった為に人格形成が
「軍隊」によって行われてしまった………彼の眼からすれば、「今時の若い
ものは……」と侮蔑の対象でしかありません。

そして、対するゲリラ側のキャラクターの描き込みも秀逸です。首長である
兄が殺されてしまい、自分が「首長」となってしまった男。殺された男を哀し
み赤軍兵士に対して「砂漠の民の報復」を行う女達……。

この映画の中で、コペチェンコは「根無し草」的な存在であり、どちらにも
属せない「コウモリ」的な立場なんですね。最後のシーンを迎えるまで……

ケビン・レイノルズ監督は「妥協の無い」映画作りをする人ですが……今回
それを感じたのが、「赦し」と言う言葉以外にゲリラ側とコペチェンコとの対話
ツールが無いことなんです。言わば両手を縛って、映画を撮っているような
ものでしてここまで徹底した遣り方をしている映画人が、まだ聖林に居たと
言うのが驚いたことであります。

ホント……因果応報を絵にした様な話しの展開に、仏教徒である自分は
違った意味で「無常感」を感じたのでありました。

「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2000年3月16日 ミラー様提供のビデオにて鑑賞)

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