(友)『ブロークンハーツ・クラブ』

本日、28歳の誕生日を迎える写真家のデニス(Timothy Olyphantさま)は、
悪友たちに見守られながらこの日を過ごした。誕生パーティに呼ばれたのは、
デニスの同居人、マッチョな駆け出しの俳優コール(ディーン・ケインさま
(*^^*)ポッ)、唯一ブロンド・ヘアーで、マッチョ・マンが3度の飯より好き
なベンジー(Zach Braffさま)、いつも自分を悲劇のヒロインに置きかえる
黒人のテイラー(Billy Porterさま)、一度別れた相手と何とかよりを戻そ
うとして腐れ縁関係を続けているハーウィ(Matt McGrathさま)、そして
皮肉屋でいつも憎まれ口を叩いているパトリック(ベン・ウェーバーさま)
そして、彼等を纏めているのが、ソフトボール・クラブの「ブロークンハーツ・
クラブ」の監督兼溜まり場のレストランのオーナーであるジャック(ジョン・
マホニーさま)さて……彼らの行く末とは如何に?

今回の映画祭で一番のお気に入りがこの作品でして、一番判りやすく言えば、
ゲイ版『フレンズ』と言う位置づけでしょうか?
上記に挙げた登場人物の殆どがゲイでして、皮肉屋のパトリックの妹もレズ
ビアンと言うご丁寧さ。(^^;;

写真家のデニスを中心に観てしまうと、この映画面白くとも何とも在りませ
ん……(^^ゞと……言うのは、劇中に『セント・エルモス・ファイアー』な
り、『マグノリアの花たち』と言う映画の題名がポンポン出てきますが、
『セント・エルモス・ファイアー』を例に取ると……主役格のエミリオ・エ
ステベスさまが一番面白味の欠ける役だったでしょう?(^^;;
それと同じで、この映画のデニスの役柄は、あくまで「狂言廻し」なんです。
一番損な役割ですから、最初に顔を出して……ハンサムさんを置く。そして、
最初にエピソードを持ってくる手法を用いております。

と言うことは、「真の主役」は他に居るわけでして、自分なりに考察してみた
ところ……それは、ベン・ウィーバーさま演じた皮肉屋のパトリックさまに
他為りません。

彼は、自分で認めるように地味な顔立ちで……常に長袖を着用しております。
これが鍵を握っているんです。パトリックは、皆が浮かれ騒いでいるときに、
ジャックのレストランの厨房でポツンと独り寂しくサンドイッチを食してお
ります。心配したジャックが声を掛けると彼は、こう言うのですよ……(涙)

「ここに最初に来たときは、パラダイスかと思った……でも、皆良い男ばかり
なんで、誰一人自分に目を掛けてくれる男は居ない」

そこで、ジャックが放った一言が効いています。

「そうだな……でも、我々には強さがあるんだ\(^○^)/」

これは思わず嬉し泣き……もし仮に、「いいや、お前さんはハンサムだよ」
と言われても彼も自分も全然嬉しくありません。自分で自分の価値を否定して
いるんですから……ですから、彼は常に長袖を着て、肉体的に目立たない様に
務め……誰かから注目して欲しい……愛されたいと願うからこそ他人に対して
の観察眼が異常に鋭い。でも、それを「皮肉」や「毒舌」と言う形でしか表現
出来ないところに彼と自分の悲劇と苦労があるんです。(笑)

そう声を掛けたジャックにしても、隠された悲劇は存在しているのです……。
彼は、元々はニューヨークで舞台俳優をしていたと言う設定に為っております。
でも……遂に目が出なかった……歳を取ったことだし、冬のニューヨークは
寒さに堪えます。そこで……ハリウッドで店を構えることにした……
昔、舞台で共演し……映画界に転身したかつての友人が居たかも知れません。
が……歳月が流れ……その意味では、どうでも良くなったかも?と捉えている
のです。昔の思い出に浸るよりは、これからの若手を育てていこう!と考え、
この「溜まり場」を作ったと考えています。

他人に対して不器用なのは、パトリックだけではありません。眼鏡を掛けた
ハーウィもそのパターンでして、別れた恋人とホントはよりを戻したいのに、
自分を優位に見せようとして失敗するタイプです。

パトリックとハーウィは、長袖仲間(笑)ではありますが、二人には大きな違い
があるんです。それは対人関係における表現方法。
誰からも愛されないと思っているパトリックは、「怒り」や「不満」を不特定
多数にぶつけます。ですが……曲がりなりにも「恋人」が居たハーウィは、
常に「不満」の部分を「元彼」にぶつけてしまうんですね……。

他人から愛されたいと渇望しても、常に相手に合せてしまうのが、無垢なベン
ジー。マッチョマンが大好きなところも自分と限りない共感を覚えてしまうの
ですが……(笑)相手に合せる余り、棄てられてしまうのでは……と常に怯えて
いなくては為らない……その弱さを鋭く突いたのがパトリックなんです。
恐らく、パトリックはベンジーの無垢なところを、或る意味羨ましく思い……
その反面軽蔑していたのでは?と思うんですよ……でも、自分が行なった事
に対してパトリックは「自覚」を持っているんです。そこが偉い!

一方、上手く立ち回っているのが、俳優のコールですね。この中で二番目に
損な役廻りです。それを敢えて引き受けたのは、余裕の為せる技なんでしょう。
ただ、一つ面白いのが……コールの場合「愛されたい」側では無く、唯一
「愛したい」側に立っていることが興味を惹くわけです。
そんなコールも、映画スターと出会い、お熱を上げる訳ですが、はじめて
立場の逆転を痛感させられる訳ですね。そして……元の円環に戻っていく……。

ありきたりと言えばありきたりな素材ですが、それを万人向けに調理すること
の難しさ……腐っても聖林!グレッグ・ベルランティ監督は上々な滑り出しを
見せました。

10月にビデオリリースされますが、静かに長く借りられる作品の一本になる
であろう愛すべき佳作の登場です。

「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2001年7月21日 東京国際レズビアン&ゲイ映画祭にて鑑賞 スパイラル・ホール)

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