(清)『サイダー・ハウス・ルール』

「完成度」という観点から見れば、今年屈指の出来栄え。ほんとうに良く出来
た秀作です。撮影監督のオリヴァ・ステイプルトン様、美術監督のデイヴィッ
ド・グロップマン様、米国アカデミー助演男優賞を本作で受賞したマイケル・
ケイン様、監督のラッセ・ハルストレム様と本当に素晴らしい「仕事」をして
おります。

メイン州ニュー・イングランド。ホーマー・ウェルズ(トビー・マグワイア様)
はセント・クラウスの孤児院で生まれ育った。ラーチ院長(マイケル・ケイン
様)口癖である「人の役に立つ存在になれ」という言い付けを守りつづけて成
長したホーマーは、院長の仕事……助産と当時禁止されていた堕胎を嫌々なが
らも手伝うようになる。成長するにつれ自分の未来に疑問を持ち始めたホーマ
ーは、ある日手術に訪れたキャンディ・ケンドール(シャリーズ・セロン御嬢
様)と、その恋人ウォリー・ワージントン(ポール・ラッド様)と共に孤児院
を飛び出した……孤児院以外の場所を訪れたことのなかったホーマーは驚きの
目で新しい世界を発見して行く。ウォリーの誘いで、彼の母が経営するリンゴ
農園で働き、宿舎の「サイダーハウス」で暮すことになったホーマーだったが。

と……ザッと内容を紹介していたのですが、大枠は本当に良く出来ていますし、
細かい描写に至るまで的確。ただ……全編を覆い尽くす「嫌味」な「死の匂い」
に閉口し……それを押え込もうとしている監督の力量に拍手でしょうか……。

ハッキリと言って仕舞えば、自分とは「御縁がありませんでした」映画なんです
ねぇ。

この原作を読んでいないので断定は避けますが、ジョン・アーヴィングの作風
って「鼻につく」んですよ。(--;)具体的に挙げていくと、この映画で強調して
いるのは「原罪」の部分ですね……人と言う存在は、善意であれ、悪意であれ
何らかの罪を背負わざるを得ないと言う部分。これは、自分の倫理観とも近い
部分がありまして、この映画に出てくる人間の殆どは「罪」を犯してしまって
いる……。それも殆どが「性」絡みなんですね……「性」は「生」に通じ……
「生」は……「死」と表裏一体………。と………此処までは宜しい。

一方の物語の軸は、「ルール」或いは、「規範」ですか………自分が決めたル
ールに従えば宜しい。これは「サイダー・ハウス」の中でホーマーが気づくこ
とですね。

で……それに絡んでくる「規範」の最も大きな因子。つまりは……「人の役に
立つことをせよ」有り難きラーチ先生の教えでもあります。

ラーチ先生も偽善的な理事会で、自分の推薦する候補者を批判することで、逆
に推薦を得てしまうという「清濁併せ呑む」人間でありまして………本来好き
なキャラクターの筈ですが………

「人の役に立つことをせよ」は、非常に立派な教えですね。( ..)φメモメモ
が……「サイダー・ハウス」の「規範」と結合することに因りまして、非常に
おぞましい香りがしてくるんです………それは、「ピューリタニズム」(清教
徒的発想)個人個人で信奉している分には、わたしは批判しませんよ……でも、
こうして一見して、「建前」に対して叛旗を立てている様なスタンスを執りな
がら、その実は一歩もその枠から出ていない……極めて口当たりの良いオブラ
ートで包んだ展開には、ただ閉口するのみ………(--;)

労働は「神」に対する謝恩である………まあ、勤勉は大いに結構。でも、自分
には関心がない規範の一つでもあるのでした。

「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2000年7月4日 ワーナー・マイカルシネマズ 市川妙典スクリーン5にて鑑賞)

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