(懐)『エクソシスト ディレクターズ・カット版』

アイラ・レヴィンの『ローズマリーの赤ちゃん』と並ぶ、ウィリアム・ピータ
ー・ブラッディの『エクソシスト』が遂に映画化された……丁度、この頃から
自分で小遣いの中から映画館に行き始めるようになりましたので、反響の大き
さは、良く判っています。自分が住んでいた仙台では、当時市内で一番大きか
った「東北劇場」……現在、東京では、比肩出来るのは「日本劇場」、「渋谷
パンテオン」位じゃないかなぁ……その位のマンモス劇場があり、そこで公開
されたのですが……ちょっと中心部から外れていたことが祟って、経営が破綻
したんですよね……(涙)が……悲劇は、それに留まらず……数年後、電気関係
の原因でもって、この劇場が全焼してしまうんです。姉がポツリと語った言葉
「これは、『エクソシスト』の祟りだ……」と。これ、今読んで貰えれば笑え
る話なんですが、当時はまことに信憑性があったんですよ……つまり、その位
のインパクトがあった作品だったってこと。

ワシントン・DCに住んでいる女優の娘、リーガン(リンダ・ブレア御嬢様)
が、階段から降りてきて、客間で汚い言葉を吐き、しかも、立ったまま御不浄
を為さいました。元々優しいリーガンの変貌ぶりに驚いた母、クリス(エレン
・バーンスティン様)は、リーガンを医者に見せるものの、思春期特有の鬱病
と診断される。その夜、リーガンの部屋から、突然大きな悲鳴が聞こえてきた。
駆けつけたクリスが娘の部屋で見たものは、激しく揺れるベッドと、その上で
泣き叫び助けを求めるリーガンの姿でした。様々な検査や治療を行うが、まっ
たく原因がつかめず、クリスは、リーガンに何が起きたのか理解できず苦しん
でおり、ついに医者にもさじを投げられたクリスは、イエズス会派教会のカラ
ス神父 (ジェイソン・ミラー様) に悪魔祓いを頼み込む。カラス神父の話を聞
いたイエズス会は、エクソシスト”悪魔祓い”として経験を持つメリン神父
(マックス・フォン・シドー様) を派遣する。こうしてメリンとカラスは、
リーガンに取り憑いた悪魔パズズと対決することになるが……

良く出来たホラー映画の殆どがそうである様に、「細部に渡っての描写」が的
確なんです。問題の「悪魔憑き」のシーンを除いては、そんなにショッキング
な描写はありません。この映画で(小説もそうでしたが)重要なのは、いきな
り悪魔がリーガンに取り憑いたから早速”悪魔払い”では無く、手順を踏んで
最後の手段として決着を付けるプロセスなんです。

刑事も出てきて、使用人の変死について捜査を進めるとか……リーガンの脳波
検査等の実証的手法を丹念に織り込み、それに冒頭シーンでのイラクでの考古
学発掘現場を持ってくることに因りまして、「日常生活」と「非日常生活」と
の隙間を作ってどちらでも無い……これは、”悪魔払い”のシーンでも指摘さ
れておりますが、常に悪魔は二階でしか活動しないんです。二階が「非日常空
間」で、一階が「日常空間」の切り分け……スパイダー・ダンスでは、一階ま
で降りてくる気があったようですが(笑)
まあ………公開時、これは削って正解でしょう。今回は無かったことにしたい
です。(涙)

オリジナル版と比べて、うーむと思える箇所があるのは事実。ショッキング・
シーンを多数追加したところで、今のレヴェルから見ると……それがどうかし
たの?と思ってしまうんです。今回、喜ばしいのは増えたからどうこう……
では無く、寧ろ大スクリーンで再度鑑賞出来た喜びの方が大きいですね。

何はともあれ、70年代オカルト映画ブームの先駈けとなった本作品。観るべ
きところはまだまだ残っていますし、メリン神父が「家」を訪れる霧のシーン
は、判っておりますがゾクゾクするほどの「官能」に満ちております。

これに比肩すべきシーンは、『オーメン』でのラストシーン。『キャリー』で
のプロムシーン。『サスペリア』での廊下を歩くシーンでしょうか?こうした
名シーンを観る為に映画館に通いつづけホラー映画愛好者としての芽を育てて
参りました。今、振り返ると甘酸っぱい感慨になりますよねぇ……。

自称「カルト部屋御挨拶係」大倉 里司
(2001年1月1日 ワーナー・マイカルシネマズ市川妙典スクリーン1にて鑑賞)

BGM:Mike Oldfiled『Tublar Bells』

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