(怖)『たたり』

自分が住んでいる南行徳のTUTAYAにも『ホーンティング』が新作として並び、
元ネタとしてロバート・ワイズ監督の『たたり』が置いてありました。この
監督、余りにも有名すぎる『サウンド・オブ・ミュージック』で知られるの
ですが……

サスペンス=スリラーと言えば、先ず思い浮かぶのが巨匠ヒッチコック、次に
くるのがクルーゾー……ですが、この『たたり』は初見でこんなことを書くの
もなんですが、『サイコ』よりも余程怖い映画だったのです。

凶事を呼ぶ家と言われつづけた迷路の様な御屋敷「丘の家」ここは、初代から
ず〜っと所有者が謎の死を遂げることで悪名高かったのです。それに目をつけ
た人類学者のマークウェイ博士(リチャード・ジョンソン様)は、所有者の許
可を得てこれを借入れ、超常現象の調査に乗り出す為チームを組む。チームの
面子は母親の看護を11年間続けたものの家族からもうっとうしがられるエレナ
(ジュリー・ハリス様)そして、勝気な性格のセオ(クレア・ブルーム様)、
そして屋敷の所有者の甥であるルーク(ラス・タンブリン様)が乗り込むことに。
だが、エレナは一目見るだけで……この家にある凶凶しさを鋭く感じとったが、
彼女には帰る家が無かった……。そして、最初の夜から奇怪な現象が多発するの
でありました。

このエレナと言う女性の「主観」でほぼ全部語られる為に、相当の演技力が要求
される役柄ですが、ジュリー・ハリス様は実に見事に神経症スレスレの芝居を見
せてくれます。現在だったら、ジェニファー・ジェイソン・リー様が演じたら嵌
まる役処。

この映画の上手いところは、彼女の主観に観客を持っていく為に極めて物語の中
に入り込ませやすい様に出来ているんですよ。ですから、最初の方でのシーンに
あれほどの「家庭不和」の描写を入れ、彼女がここを出たい……でも、出たら他
に行くところが無くなるし、マークウェイ博士にも、淡い愛情の様なものを抱き
かけている。言わば「逃げれば良いのに……」と我々が思う手段をこうして潰し
ていく展開の上手さが光ります。

そして、館に何があったのか?を遠回しに浮かび上がらせる技法は流石に巨匠
だけありまして上手いものですし、脚本に何ら「矛盾点」が無いのです。それは、
最後のシーンで思い返すと……ああ、そうか!と膝を叩くような台詞が張り込ま
れており、「超自然現象」を扱ったにも係わらず、極めて「合理的」な収め方。

この映画、自分が観た範疇の「御屋敷物ホラー」の殆ど全ての土台を成している
んですね。『家』(これが一番近いかな)、『レガシー』(遺産を受け取る)、
『ヘルハウス』(調査チームが乗り込むところ)、『サスペリア』(首吊りの
シーン)『オーメン』(御屋敷物ではありませんが屋根の写し方等に類似性多数)、
『サスペリア2』(鏡のシーン)……とパッと思い付いただけでもこれだけ多数
ありどれもこれも、今や「古典」の域迄達したものばかり……その土台と為った
作品が自分が生まれる前に(63年)製作されたと言う事実に驚くばかりです。

36年目でも怖い映画と言うのは、そうそうあるものでは無いのです。

自称「カルト部屋御挨拶係」大倉 里司
(2000年5月17日 ビデオにて鑑賞)

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