(信)『インサイダー』

アメリカ3大TVネットワークの「CBS」は、エドワード・マローと言う稀
代の大キャスターを得て「調査報道」に力を入れて来た局ですが(マッカーシ
ズムを倒してしまった実績は大きい)。現在は「60ミニッツ」と言うのが売
りの一つ。そして、その看板キャスターが、マイク・ウォレス様。日本でも、
提携関係にある「TBS」にて毎週日曜の深夜に放映している「CBSドキュ
メント」で彼の顔を見た人も多いのでは無いかと思います。今回は、その「6
0ミニッツ」の辣腕プロデューサーのローウェル・バーグマンと全米第3位の
シェアを誇るタバコメーカー、ブラウン&ウィリアムソン社(クールですか…)
の元副社長ジェフリー・ワイガンドの二人を中心にした余りにも生々しい映画
です。

何と!この社(と言うか、タバコメーカーは全てそうだと思っていますが)は、
タバコの害を知りながら、ニコチンをより促進させる為の物質を混入し、それ
を公表するかどうかでワイガントは解職になった……その内幕を「60ミニッ
ツ」で放映することに為ったが……同社は凄まじい圧力を掛けてきたという実
話です。

「煙草の害」を知らしめる映画か?と思ったのですが、実際のところは、一つ
のテレビ局と二つの新聞社のジャーナリスト魂と、営利企業としての側面を描
き出した非常に力がこもった作品。正に「力作」。

営利企業としての側面を描きだした映画としては、76年の『ネットワーク』
にとどめを刺しますし、これ以上の映画は出てこないでしょう。が、今回は局
内の「反逆児」バーグマンと、「科学者」故に「実業家」としては成り得なか
ったワイガンドの二人に焦点を当て、「実世界における信念と信頼」のドラマ
として、無骨ながらもグイグイと引っ張っていくのです。

昔、裏社交界のとある酒場で、『週刊新潮』の記者の方と御話する機会があっ
たのですが、その際にこんなことを聞いたのです……。

「でかいスクープを取れる場合には、接待なんて問題外。あくまで自分と取材
される側の”人間”対”人間”の信頼関係になってゆく。相手の言うことを最
初は疑っても、最後はトコトン信じてやらないと決定的な材料は出て来ない」と。

自分でも、ホント良く覚えていたなぁ……と感心するのですが、この映画でも
突詰めれば「人間」と「人間」の付合いが如何に重要に為るか?と言う問題。
バーグマンにしても、普段の付合いから新聞社にも「情報」を贈与して、ギブ
&テイクの関係に持っていかないと「引き延ばし工作」は出来ませんし、個人
主義的な米国ジャーナリズムの世界でも、こうした「賃貸貸借表」が生きてい
たことに胸をなで下ろしたのでした。

「タバコ業界」の人よりも、「報道関係」の皆様に是非観て頂きたい映画だと
思いましたね。

「裁判映画友の会」広報担当 大倉 里司
(2000年6月1日 ワーナーマイカルズ市川妙典スクリーン4にて鑑賞)

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