(船)『海の上のピアニスト』

個人的には、『ニュー・シネマ・パラダイス』の最初のバージョンにある「甘
たるさ」が大好きだったのですが、扱うジャンルが違うとこうまでうざったい
ものか………(--;)と思った一本でした。

ただ、これはあくまで好みの問題でして、満席の会場内でも随所で啜り泣きの
声が聞こえたので、嵌まってしまった方を羨ましく思い、出来ればそう在りた
かったなぁ………と思うんですね。

そこが、『ブラス』とは、まるで違うところ………(^^ゞ

1900年にイタリアとアメリカ間の大西洋航路を運行する豪華客船ヴァージ
ニア号のダンス・フロアのピアノの上に小箱に入れられた赤ん坊が居た………
それを発見したのは、競馬狂いの黒人機関士ダニー・ブートマン(ビル・ナン)
ダニーを親代わりにしてその少年は見る見る内に音楽の才を伸ばし、一度も船
を降りたことが無い天才ピアニストナインティーン・ハンドレッド(ティム・
ロス)と為ってゆく。彼の物語を、同じ船でトランペッターとして活躍してい
たマックス(ブルート・テイラー・ヴィンス)の語りによって綴られてゆく御
伽話。

随所に良いシーンはあるのですよ………時化で揺れている船の中で、ピアノが
走りながら演奏するシーンとか………ジャズ奏者とのピアノによる「決闘」場
面とか………

ただ、その決闘の場面でも、相手方のジェリー・ロール・モートン(クラレン
ス・ウィリアムズ3世)のキャラクターが、ただ単に自信過剰のテクニシャン
としてのみ描かれていたのは残念です。

正直言って仕舞えば、「本来縁の無いもの」に自分から接近して、それが自分
の中で消化しきれて居ない感じが付き纏ったのですよ……『ニュー・シネマ・
パラダイス』は、観客である自分に取っても、作り手である監督にとっても、
「自分」か「親しい友人」の物語として入り込む余地があっただろうし、作り
手の「想い」が恥ずかしい迄にストレートに入ってきておりました。だから、
あれだけ甘い展開でも泣けたのですが、今回は「ジャズ」と言うか1920年
代の文化について、軽くリサーチしてその侭作ってしまった感が強くするので
す。嫌味では無いんですが………音楽を扱った映画としては、タベルニエの
『ラウンド・ミッドナイト』等は、ジャズと言う音楽に造詣が無いぼくにです
らジワリとくる「何か」があったのですね………

だから、何処まで行っても「つくりごと」の範疇を出ていない、駄目では無い
けれども………単にうざったい作りとなってしまったのを惜しいと思います。(涙)

同じ寓話を観るのだったら、『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』の方を、ぼ
くは100倍評価致します。

「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(11月2日第12回東京国際映画祭特別招待作品)

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