(枷)『パトリオット』

1763年、フレンチ・インディアン戦争が終結。戦争のヒーローだったベンジャ
ミン・マーチン(メル・ギブソン様(*^_^*)(ポッ))は、7人の子供の父親となっ
た今、亡き妻の願いもあり、暴力とは無縁の平穏な生活を送っていた。平和主
義を貫くベンジャミンは、愛国心に燃える長男ガブリエル(ヒース・レジャー
君)の参戦に苦い顔を見せる。しかし、家族にも戦火が迫り、英国王軍の腐れ
外道の大佐タビントン(ジェイソン・アイザックス様)に大切な次男を殺され、
なお且つ長男のガブリエルも拉致されたとき(ココ重要!)彼は再び銃を取る
ことを決意する……

この映画の製作が、『インペデンス・ディ』のローランド・エメリッヒ監督と、
『プライベート・ライアン』の脚本家ロバート・ローダットが手を結んだもの
と知った時、私は悪夢かと思いましたよ(爆)試写会状が売ってなければ観る
のは後回しになっていたでしょう。で……おまけに、音楽がジョン・ウィリア
ムズだし……叩く要素は山程あったのです。ただ……一筋の光が、輝けるメル
ちゃん!だけだったのですが……が……

映画と言うものは、観て見るまでは判らない!ひょぇぇ……これ!良いです。

何が良いか……と言えば、キャラクターがちゃんと立っていることなんです。
ホント……あの薄々の『プライベート・ライアン』の脚本家?と俄かに信じら
れない出来栄えの良さ。まず、ベンジャミン・マーティン様……昔の戦争の傷
跡が残る元兵士で、大量虐殺者なんです。つまりは加害者……だからこそ痛み
を知っているんですね。それに「殺して楽しい」……と言うか一種の昂揚感を
感じ、それを封印する為に、亡き妻の遺言と家族を「枷」としている様なとこ
ろがある非常に興味深いキャラクターです。「爆発寸前の静かなる狂気」を威
厳を持って演じられるのはメル・ギブソン様しか考えられません!

彼が次男を殺されただけでは、銃を執って民兵を組織することは無かった筈な
んです。ただ……「腐れ外道」の英国王軍の大佐タビントンが、独立軍の伝令
であったガブリエルを拉致したことにより……救出する筈だけだったのが、
「枷」が外れて「殺人マシーン」となっていく様が良く出ております。

前の戦争で、戦友だったバーウェル大佐を演じられたクリス・クーパー様も、
素晴らしいキャラクター造形ですね。「建前」と「本音」を交互に出しながら、
お互いに理解しあっている感じが一発で判るし、これぞ「男の友情」ですなぁ。
ガブリエルを引き取る際に自分の目の届く範囲において、戦友の息子は死なせ
ないように気を遣う様が味があります。これぞ色気。

フランスのビルヌーブ少佐を嬉々として演じるのは、不精髭を生やすと仏蘭西
一セクシーな叔父様(*^_^*)(ポッ)チェッキー・カリョ様。

民兵側のほうも、ホント……細かいキャクターまでしっかり作ってあるし、
「内戦」だけありまして、より身近な「私怨」の部分なんですね。決して
「独立」なり「自由」を旗印に掲げていない……英国王軍に肉親を殺された、
家を焼かれた…と言う「負の情念」で織り合せておりますから、感情移入しま
くり!\(^0^)/
身体が弱っている主人の身代わりとなって戦う、黒人奴隷のように「自由」を
求めての筈だったのが、最後は自分の威信を賭けて戦うと言う塩梅で、「奇麗事」
の部分も納得の行く様に描写されているんで、観ているほうは安心して楽しめます。

今度は英国王軍サイドですが……コーンウォリス将軍を演じたのは、トム・ウィ
ルキンソン様、当たり前ですが上手いです。一見飄々と見せながら、実は飛んで
もない古狸だったと言う役処を軽く演じられており、「負の情念」の権化である、
タビントン大佐とのコントラストを際立たせております。どちらが嫌いか……と
聞かれれば、どちらも嫌いなキャラクター。一方は「偽善」と「建前」を駆使す
る古狸。そして、可哀相だと同情はするけど……さっさと死んで欲しかった
「残忍さの権化」の腐れ外道。で……タビントンの部下に一人光るキャラクター
がおりまして、一般公開のときにもう一度チェックしますが、彼が良いんです。
これはネタ明かしになるんで封印しますが、観れば、ああ!あの人か……(涙)と
思う位の良いキャラクター。長男のガブリエルくんが霞みましたね(断言!)

女性陣、子供達まで……決して「お飾り」では無く、必然性のある行動を取りま
すし、鬱陶しい女が一人も居ないのが快感。

そして、美術、撮影が凄いのです……相当に絵画史を研究した方だと思います。
ヴァトーの様な園遊会、ワイエスを思わせるような田園風景(この位だったら
沢山観ていますよね……)が、クライマックスの決戦シーンで、観ながら背筋
が硬直しました!メル・ギブソン様演じたベンジャミンが……破れた星条旗を
持って門迄駆け寄るところ!ウジェーヌ・ドラクロアの畢生の傑作!『民衆を
導く自由の女神』と重なり……その瞬間に、脳髄から「映画的官能」の嵐が全
身を駆け巡ったのです。これだけではなく……まだまだ残っていますが、あと
は観てのお楽しみ〜〜♪

2時間44分と言う時間が少々長い気がネックですが、本当に良く書き込まれ
た脚本と素晴らしき美術の融合作として、強く推薦致します。

「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2000年8月31日 九段会館にて鑑賞)

BGM:オルフ作『カルミナ・ブラーナ』

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