(闇)『と井戸の中』

人間と言うものは、往々にして同性に対しては寛容になるものです……。
と言う訳で『女と女と井戸の中』を鑑賞しましたが、僕は劇場を出るまで
これが、女性監督サマンサ・ラング様のしかもデビュー作だなんて知ら
なかったし、ずっと映画を観ている間、男性監督にしては、辛辣だなぁ……
と浅墓にも思い込んでしまったのですね……m(_ _)m

この映画に関しては、あれこれ筋立てを紹介するのは野暮なのですが、
お約束なのでホントに軽く流します。m(_ _)m

オーストラリアのとある僻地、若い家政婦であろうキャサリン(ミランダ・
オットー様)がヘスター(パメラ・レイブ様)の屋敷にやってくる(此れが
段々とわかってきます)或る日、キャサリンが誤って路上にいた男を
轢き殺してしまい、ヘスターは独りでその死体(?)を井戸に投げ捨
てる……万事がOKと思った或る日……二人の関係が崩れ出す切っ
掛けとなる「ある事件」が起きる……

この映画は、全編がブルーに覆われております。その為、二人の顔を
含め、全体的に「生気」が薄いのですね……逆にこれが演出の狙い
ですからその意味で成功しております。

ホント……女性の持つ「饐えた嫌らしさ」を極限まで捉えた作品です。
マダムが御書きになるよりも、男性である僕の眼から書いた方が、
より正直に書けるのでは無いかと思いキーを叩いております。

矢張り……女系家族に生まれて、ゲイとして育った僕の眼から見ても
この映画に心底感情移入して「痛い」と思えることは出来ませんが、
感性の鋭い女性の方であったら、本当に「魂の叫び」が込められている
作品だと思って鑑賞されるでしょうし、それは、僕が『パスカリの島』を
観た時の感情に置き換えれば容易に推察は付きます。

この映画のヘスターも、『パスカリの島』のバジル・パスカリも根は、一緒
のキャラクターなんですね。(殊に後半の行動パターンが)
御二人とも、「独占欲」の為に悲劇を招いてしまうのですが……。

「独占欲」は、本人の自覚の有無とは関係が無く出てくる怖い感情です。
抑えても抑えても、毎回違った形を取って相手に押しかかるもの……。
ヘスターは隣人からそれを告げられても、既に彼女の心には固い扉が
下ろされている状態……。

既に終わり掛けているのを知っていても、突き進むしか無い「性」……
金の為……キャサリンの為……それは否。

自分を必要とされる人が欲しかったが為……それが解っているから
こそ「鍵」は絶対に手放そうとはしない……。

キャサリンは、己の愛か?それとも、妄想か?を貫き通した女。
彼女には、「諦観」はあっても、「後悔」は無い……。

破滅を受け入れる男と、破滅を迎えても生きようとする女……これが、
両作品を見比べた上での率直な感想です。

「大河浪漫を愛する会」 大倉 里司(HCD05016@nifty.ne.jp)
(4月28日 恵比寿ガーデンシネマにて鑑賞)

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