(声)『シン・レッド・ライン』(日本語吹き替え版)

字幕で表現できる文字数と吹き替えで表現出来る文字数は、圧倒的に後者の方
が多いのですが、今回、『シン・レッド・ライン』を観るに当って気になって
いたのは、「日本兵の台詞がどうなっているか?」だったのですね。

既に御存知の方も多いと思うのですが、何と!この映画、本家のアメリカ公開
時にも、日本語の台詞に対して「英語の字幕は付かなかった」のです。

ラスト近くに、「言語の障壁」を描いたシーンがあるのですが、ウィット君を
演じたジム・カヴィーゼル様にも「何を喋っているのか?」は明かされなかっ
たとの事。

そうした経緯を知っていた為に、今回の吹き替え版では、ラスト近くでは、
ウィット君を囲んだ日本兵が英語で話しているのでは?(笑)とも思った訳なの
ですよ。

結論から先に言ってしまうと………日本兵の台詞は全て原語の侭でした。

ジム・カヴィーゼル様の御声は、非常に柔らかく優しいのですが、今回の吹き
替えは頑張ってはいるものの………やはり及ばずと言うのが本音。

ただ、スタロス大尉、ドール一等兵くん、ベル二等兵さん、ウェルシュ曹長の
御声は、それぞれに特色があり、ドールくんとベルさんの声ですが、認識でき
る声が多くなっている為、より一層彼等の心に迫ることが出来た気が致します。

ウェルシュ曹長がウィット君にお小言を垂れるシーンでは、何やら「刑事物」
的な雰囲気を醸し出しておりますし、苦労人のトール中佐がスタロス大尉を解
任する場面では、日本語で行われている為にリストラ勧告する中間管理職同士
の悲哀が良く出ており、これらのシーンでは吹き替え版の方が光りますねぇ。\(^○^)/

しかし、何と言っても「影の主役」我らがドールくんの吹き替えは見事!
ケック軍曹が自分の身を挺して仲間を救った後に、ドールくんとベルさんの間
で、「手紙を書けよ」的な口論がはじまるのですが………。
8度目の上陸では………ケック軍曹がベルさんに水筒を渡すシーンの他に、こ
のドールくんの震えた声を聞いて泣いてしまったのです。

「だったら………お前が書けよ」

悪く言えばドールくん流の責任転嫁ですが………これって、言う方だって辛い
んですよね。

「ああ言うときは、こう言うしかないだろ」

とも語っていますが、これ真実。パニックに陥った心理が痛いほど判るだけに
自分がミスをした時に「つい」責任転嫁をしてしまう心理を良く出しております。

で………肝心要な点は、この時に震えた声を出していることなのです。

それと、吹き替え版で思ったことは、この映画、極めて微妙なバランスの上で
成り立っていた映画だと気がついた点なのです。
と、言うのは非常に情報量が多い為、「軍事的な側面」と「精神的な側面」
それぞれの台詞が多い。「軍事問題に弱かった戸田奈津子様」の批判を受けてか、
非常に今回の版では、軍事行動に対して詳細な説明が為されております。

劇場で観ていた分には気に為らなかったのですが、そうしたバランスを保って
いたのは、カヴィーゼル様の「声質」だったのですね。
本当に、彼の声程抵抗無くすんなりと入る音は無いのですよ………。

ですから、マリック監督が、イントネーションに至る迄細かいダメ押しをした
と言うのも納得が行く訳でして、「様々な声質」が「それぞれの魂の声」とし
て放出され、冒頭からラスト迄流れる「天の声」(僕的には阿弥陀となった
ウィット君の魂の声)に集約されるのですよ。

それと………吹き替え版に限らず、テレビサイズに収まった画面ですが、影の
部分が多く、とりわけ人の顔が判別し難いことと、発狂してしまったマクローン
軍曹の銃を取り上げるストーム軍曹の御姿等、細かい両脇の部分が無くなってし
まったのは仕方無いとして………。
中央に死んだ筈のホワイト少尉の顔が大写しなのは不味いでしょう。(^^ゞ
劇場だと気が付きにくいけど………テレビだとホントに目立ちます。(笑)

「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(9月29日ビデオにて鑑賞)

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