(土)『フィオナが恋していた頃』

主人公の冴えない中年高校教師キアレン(ジェイムズ・カーンさま)の母フィ
オナは、今は年老いて意識がないまま、ベッドに伏せている。生まれた時から
父を知らないキアレンは、ある日、偶然に古い写真の中にまだ若く美しい母を
見つけた。その写真と共にあったのは一冊の日記帖。そこには「愛するキアレ
ン」の文字が……驚いた彼は、甥っ子と共に謎を解く為に母の生まれたアイル
ランドに旅立つのだった。そこで知った1939年の「ある悲劇」とは……

ハッキリ言えば、説明不十分な出来の悪い映画なんです。まず、冒頭のシーン
からして、何だかイヤな予感がして……寝ているキアレン母と妹の関係が明確
に見えてこないし……何となく兄弟かなぁ……と思った次第。
アイルランドに渡ってからの語り口も、年老いた老婆の口から語られるのです
が……その切り方が下手です。

そして、これは誰もが指摘するでしょうが……「結末」についてなんですよ。
これ以外の解決法があるんでは?と思いましたし……何故?墓で泣く……って
ところも十分に描けているとは言えません。
そして、過去と現在の対比が……どうも、捩れてしまって奇麗に纏まらないん
ですよ。現在=過去と事件が交錯し、過去の悲劇が現在蘇りそうになり……
真実を知った現キアレンによって阻止するという出来だったら傑作になったで
しょう。

でもねぇ……「出来が悪い」=「嫌い」、「出来が良い」=「好き」では無い
んですねぇ。少なくても自分の場合。

かなり……いえ、相当に「ツボ」に嵌まってしまったのですよ。

まず、ドナール・ラニー御大が音楽担当(ひえぇ……(^^;;)なんで、静かに
音楽があって、景色が浮かぶ………そして、土の匂いがするんですね。掘り返
して湯気が出そうな魂の大地が……。
監督・撮影・主演とクイン3兄弟(皆ハンサムさんなんだろうなぁ……)ですが、
撮影のデクラン・クインさまは上手いです!演出のポール・クインさまはどうも
(でも、嵌まるんですよん)主演が、今回ホントに田舎臭い農夫を演じていた
アイダン・クインさま。(*^^*)ポッ

彼が田舎臭いのが良いんです(笑)朴訥な感じであの眼でボソボソと愛の告白を
されたら教会や親がどう言おうが、即座に靡きますね!

で……凄いと思ったのが、教会の偽善性と村人たちの因習が絡まりあって……
ああいう結末になるんです。説明不足(笑)なのが判っているんですが泣けて泣
けて仕方が無いんです。

純朴な青年だからでしょうかねぇ……それとも、不幸の歯車が廻って次第に追
い込まれる展開ででしょうか……。まだ、この辺が自分でも判っておりません。

一番の「ツボ」が現キアレンが、夜公衆電話から、病床の母に電話を掛ける場面(涙)
彼女は黙っているだけですが……あの顔を観ただけで滂沱の涙状態。これぞ大河!!!


『アンジェラの灰』のほうが遥かに出来が良い映画なんですが、どちらが好きか?
と聞かれれば、即座に『フィオナが恋していた頃』と答えるでしょうねぇ……

あと、この映画なんですが……原題の『This Is My Father』でも良いし、『フィ
オナが恋していた頃』でも、それぞれに「大河」が思い浮かぶ希有な例ですねぇ。

「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2001年3月22日 ビデオにて鑑賞)

BGM:レラティヴィティ『ゼア・ワズ・ア・レディ』

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