(怒)『スリー・キングス』

米国対外政策批判映画としては、オリヴァー・ストーンの『サルバドル』に比
すべき大傑作。今のところ2000年度ベスト1はこれです。もし、順位が狂
うとしても3本の指には入るだろうと思っております。

1991年3月……湾岸戦争終結後のイラクにあるベース・キャンプ。降伏し
たイラク軍兵士の一人が、屈強に服を脱ぐのを拒否。何だろうと思ったが、何
と肛門にクウェートから収奪した金塊の保管場所を記した地図を隠していたのだ。
ひょんなことから、特殊部隊のアーチ・ゲイツ少佐(ジョージ・クルーニー様)
はこのことを知り、補充兵であるトロイ・バーロー上級曹長(マーク・ウォール
バーグ様)トロイを慕ってわざわざイラク迄追ってきたコンラッド・ビグ上等兵
(スパイク・ジョーンズ様)、生真面目なチーフ・エルジン二等軍曹(アイス・
キューブ様)を巻き込んで、金塊奪還作戦を目論む……。どうせ戦争が終われば、
退屈でやるせない世界が待っているだけ……と考えた末で、計画も「早朝に出発
して金塊をいただき、昼前には戻る」という簡単なものだった。

確かに簡単に金塊は奪還出来たが、それと同時に四人が見たものは、イラク軍に
よる民衆への弾圧だった……。

幾つか欠点はあるんです。まず、多くの人から指摘されているのが、前半と後半
のトーンが異なる為乗り切れないと言う問題。

これ判ってやっていますね。製作陣は。軽目と評されることが多い前半ですが、
冒頭にトロイが戦争終結後に一人の兵士を撃ってしまい「人を殺した………これ
はレイプより悪い」(by『シン・レッド・ライン』でのドールくん箴言集より)
の様な表情をして……次のシーンでは、「記念写真を撮ろう」と一般人の視点か
ら見た「湾岸戦争」の典型が現れ、それから程なく破天荒なベース・キャンプで
のダンスシーンに繋がるのですが、これ……直感として感じたのですけれども、
エミール・クリストッツアの『アンダー・グラウンド』での地下壕での酒宴を思
わせるような「反逆に燃えた情熱」を嗅ぎ取ったのですよ……。
何の変哲も無い馬鹿騒ぎだけを映しているんですが、「絵に力」があるんです。

それだけだったら「直感」ですから説得力に欠けますが、例えば黒人兵士のチーフは、
仲間内で「野蛮な兵士云々」と敵兵のことを評されると注意するだけの心情を持ちあ
わせた人間なんですね。このやりとりだけで、かつては肌の色のことも含めて「差別
される側」の立場だったことが良くわかり、それが故にこうした発言が我慢出来ない
んです。

アメリカ兵4人のみならず、全てのキャラクターが公平に描きこまれ、トロイを拷問
に掛ける兵士ですら過去を織り込ませ、トロイが苦痛にうめく姿を見て実行者も苦し
んでいる……トロイもまた、自分が直接手を下したのでは無いとは言え、彼の痛みが
判る……。そして、敵役のイラク側の兵士も、体制側であるフセイン大統領を極度に
恐れている。命令に抗すれば……死あるのみ。

誰が一番の悪か……と言えば、反フセイン運動を煽るだけ煽ってその後何のフォロー
もしていない米国を始めとして列強諸国なんですね。そして、70年代のオイルシ
ョックから一貫して「アラブ支持」ならぬ「アブラ支持」を掲げてきた一貫性の無い
外交しか出来ない日本もまた情けない。(--;)<余談

実は、この映画を見てから知ったのですが、脚本、監督を務めたデイビッド・O・
ラッセル様が、映画の企画を知ってからリサーチを始めたと言うのには心底驚きました。
てっきり、国連のボランティア活動で見聞きした実態を元にして脚本にし、映画化迄持
って行ったとばかり思っていたのですから……。と、言うか、この映画の特徴はディテ
ールへの拘りが非常に多く、生で見聞きしないと書けないだろう……と思っていたので
すが、完全に白旗です。(^^)/~

これぞ、90年代を代表する戦争映画の金字塔であり、同時に米国対外政策批判映画の
大傑作として強く推薦するものであります。

「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2000年4月13日 ワーナーマイカルズ市川妙典スクリーン2にて鑑賞)

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