(魂)『奇跡の輝き』

彼は、いま天国にいる……と言うナレーションから予告編がはじまって、監督
がぼくにとっての魂の映画の一本である『心の地図』を撮ったヴィンセント・
ウォード監督だったと知ってからは、超期待の一本だったのです。

物語の方をごく簡単に説明してしまうと……若き医師クリス(ロビン・ウィリ
アムズ)は、スイスのとある湖で、彼にとっての理想の女性アニー(アナベラ・
シオラ)と出会い結婚をする……やがて歳月が流れ二人の子供に恵まれた
が、ある日……不慮の事故で二人共に失ってしまう。

そして……彼もまた、事故に遭遇し……天国に召されることに……。
しかし、彼がいくら望んでいようが……現世に残してきた妻アニーの哀しみを
癒すことは出来なかった……。

或る日、現世から天界の案内人であり、生前の彼の恩師であったアルバート教
授(キューバ・グッティング・ジュニア)からアニーは自殺し、二度と会う事
が出来ないとの報告を受ける。

クリスは、固い決意の基……妻アニーを取り戻そうと「黄泉の国」へと旅発と
うとしていた……。

原作が『ヘルハウス』とか『地球最後の男』等を御書きになられた、リチャー
ド・マシスン、脚本が……『レインマン』が超有名ですが……僕的には、『ジ
ョイ・ラック・クラブ』とか、『ブラック・ウィドー』の脚本の方が遥かに好
きなロン・バス。

で……今回は、ロン・バス様の方が製作総指揮も御務めに為られており、『心
の地図』を観て……彼ならばと……白羽の矢を立てたのがヴィンセント・ウォ
ード監督。

前置きが長くなりましたが……実に良いです。この作品。
ぼくが……『荒木経唯展〜センチメンタルな写真、人生』から、ようやく『シ
ン・レッド・ライン』を観る決意が出来て……今迄に6回鑑賞し……浄土門を
初めとして仏教に改めて入り直し、それから天童 荒太様の『永遠の仔』で痛
烈な迄に打ちのめされ……この『奇跡の輝き』そして『八月のクリスマス』へ
と繋がってゆく……
何かここ最近、目に見えない力……と言うか、ぼくの魂が「生と死」とか「天
国と地獄」なりの……一つの円環を形作って居るような気がするのですし、
ぼくもそれを強く求めているのです。

映画的に見たら、欠点が無いわけでは無いのです。一番の欠点が最初のシーン
でロビン・ウィリアムズが若く見えないこと(爆)
今更……20代の青年を演じるのは流石に無理があります(笑)×(涙)

この映画……天国のシーンは、実に西洋画の技法をふんだんに用いており
クロード・ロランを初め、ターナー、コンスタンブル等の風景画の巨匠の作品
から強く影響を受けております。
地獄のシーンでは、ボッシュ、ゴヤ、デューラー等の絵画の影響を感じました。

『シン・レッド・ライン』が日本画の世界だったらば、『奇跡の輝き』は西洋
画の世界。極めたものはやはり……美しいです。

最後になりますが……ぼく自身としましては、この映画に示されたのとまるで
同じ死生観を共有しております。地獄とは……自らの魂がおのおのに作り出す
もの……。

それに……完全なる善人等……この世には存在しない。人は、知らず知らずの
内に人の魂を傷つけ……それが故に苦しむ。でも、だからこそ魂は救われるの
だとぼくは信じております。

ぼくにとっては、「地獄」こそが……真に救われる場所なのです。南無南無。

「大河浪漫を愛する会」大倉 里司(HCD05016@nifty.ne.jp)
(6月12日 丸の内ピカデリー1にて鑑賞)

BGM:シセル・シェブー『さまよえる心』

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