(哀)『夜半歌聲』

97年の如月の20日に、シネ・アミューズにて『夜半歌聲』を観てきました。
(17時20分の回です)

監督のロニー・ユー様は、以前に傑作である『白髪魔女伝』をお撮りになった
方ですが、『白髪魔女伝』が傑作なら、『夜半歌聲』は大傑作と言って良い
出来だと思いました。m(__)m

セピア色の画面が現われ、霧の中を一台の馬車が走っていくところから、
僕の好きな「ゴシックロマン」の「色」があって好きなのですが、廃屋と
なった劇場を見せるあたりには、思わせぶりな演出だなぁと思ってみたり
しました。
しかしながら、管理人の話す「10年前の惨劇」の回想シーンから、
「何があったのか?」と言う語り口にまんまと乗せられてしまいました。

現在は、薄暗いイメージで統一し、記憶の中にある過去のイメージを
絢爛たるカラーで見せる技法は、ティラー・ハックフォード監督の大傑作
『黙秘』を思い出させるものがありました。

『黙秘』でも、理不尽な「男性支配主義」に対しての怒りと哀しみが画面から
滲み出て来て、観ていて涙が止まりませんでしたが、この『夜半歌聲』でも
取り上げるテーマの一つにはそうしたところもあるのでしょう。

愛していたソン・タンピンとの間を切り裂かれ、政略結婚によって汚濁の結婚
をさせられたユンエンは、ただ単に「処女」ではないと言う理由だけで、芸術
局の局長の息子から迫害を受け、離縁されます。
これは、単に「嫉妬」だけの問題ではない筈です。
男性が何故、「処女」を好むのか?それは、女性を自分の思い通りに支配
したいからに他ありません。
その結果、あの馬鹿息子は10年の歳月を経て、「権力」をかさにして、
また新たな女性を犠牲にしているのです。
(何か『ある貴婦人の肖像』の感想みたいになってしまったなぁ)

レスリー様演じる、ソン・タンピンならずとも、一度ならずとも二度までも
「表現の自由」と「人権無視」をされたら、頭にくるでしょう。
そして、彼は復讐の刃を向けたのです。
この映画で評価したいのは、その局長の息子を殺さずに「法の手」に委ねた
所にあります。
10年の間に復讐を何度も考えたのでしょう。でも、結果的にそれをすることは
相手と同じレベルまで自分を下げてしまうと考えたのだろうと思います。

映画的に言えば、馬車に乗ったまま「心中」でも良かったとは思いますが、
馬車のシーンでも最初のシーンと繋げてしまったところが、最高にポイント
が高いと思います。

あと、この映画の凄いところは、映像と絢爛豪華なセットですね。
あのオペラ座のセットは半端じゃありません。
こんな愉悦を感じたのは『エイジ・オブ・イノセンス』を観たとき以来ですから。

他にも色々と書きたいシーンはあります(白紙の手紙を渡して「勧進帳」を
演じるところとか)が、長くなりそうですのでとりあえずここまでに致します。

大倉 里司(HCD05016@nifty.ne.jp)

BGM:オリジナル・サウンド・トラック 『夜半歌聲』

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