(詞)『8Mile』

1995年、此処は自動車の殿堂デトロイト。プレス工場で働き、思い
つくままに歌詞を紙に書き綴る白人青年ジミー・スミスJr.(エミネムさま)。
彼はラッパーとしてのプロ・デビューを夢見ているが、黒人ばかりが出場
する街のラップ・バトルにはプレッシャーを感じ、声が出なくて退場する
体たらく。
この息子にして、この母あり。母とは名ばかりのステファニー(キム・ベイ
シンガー御嬢様)は、ジミーのハイスクール時代の先輩グレッグ(マイケル
・シャノンさま)との情事に溺れており、何れ下りる彼の疾病保険を頼って
その日暮らしをしていた。そんなある日、ジミーは、モデルになることを
夢見てウェイトレスとして働いているアレックス(ブリタニー・マーフィ
御嬢様)と出会い、恋に落ちる。だがステファニーは、家賃滞納の為、住ま
いからの立ち退き命令が届いても一向に働こうとせず、アレックスは業界
にコネがあるという業界ゴロのウィンク(ユージン・バードさま)に抱かれ
ていた。怒ったジミーは、ウィンクが腰巾着としてぶら下がる、街のラップ
・バトル王グループであるフリー・ワールド一派に週末のラップ・バトルで
決着を付ける決意を固めるのでありました……。


何故、この映画を観たのか?に関しては、非常に馬鹿げた秘密があったの
ですが、まず、製作・監督がカーティス・ハンソンさまと言う事に驚きま
した。前作『ワンダー・ボーイズ』に関しては、鬼門の3人(マイケル・
ダグラス、ロバート・ダウニー・JR,トビー・マグワイヤ)と言う自分が
ハッキリ言えば苦手な3人が競演した為、殆ど口から泡を吐いて悶絶状態
でしたが……これに関しては、意外に……と、言うか拾い物の一本でした。

この手の映画にありがちな、サクセス・ストーリーではありません。
夢を持ち続けて、思いつくままボロボロになった紙に言葉を書き付けて
いても、友人に工場迄送って貰った際に、こう呟くんです。
「夢っていつまで持ち続けられるんだろう」

映画の冒頭で廃屋が連なり、スラムとなった街……デトロイト中心部とは
市外局番も違う8マイル先の失楽園。

出てくるのは、黒人とレッドネックの白人。言わばブルーカラーが大半の
の企業城下町。

ヒップ・ホップに関しては、殆ど無知でしてエミネムの名前と強烈なキャ
ラクターだけは知って居ります程度ですが、ここでのラップは言わば「連歌」
の世界。全て和歌で返答する平安貴族の知のバトル。

実は、大変に似た構成の映画がかつてありました。パリス・ルコント監督
『リディキュール』でして、こちらではフランス革命前夜にベルサイユ
宮殿にて行われていた「エスプリ」の応酬合戦。言葉一つで宮廷から追い出
される危険もあり、一夜にして社交界の華となる言わば板子一枚天国と地獄。

『8マイル』は、優雅な生活とは無縁ですが、それでも「階級世界」は実在し、
汚い言葉を羅列しながらも要求されるのは、「エスプリ」ならぬ「ウィット」
の世界。やはり要求されるのは、言葉の韻を踏んでいなくては為らない高度な技。

環境は大いに違いますが、もう一つ大きく共通する要素がありまして、それが
「閉塞感」なんです。宮廷に居てカード遊び……時々御酒を嗜んで、夜は御食
事会が一方の世界。方や前述の通り工場にて単調な作業を繰り返し、不味い
ランチを食べ、夜は夜でオンボロ車を走らせて一夜の憂さを晴らすだけの生活。

でも……どこか似ていませんか?どちらの世界にしても、コネを口実に女性を
手玉に取る黒人男性。もう一方では、王や王妃に取り入り続ける為に魂の周り
を鉄の鎧で固めている伯爵夫人。

どちらも「狭い権力闘争」の中に身を置いて、その中で自分の一番有利な場所
を確保している人間です。でも……彼らも、ここを追い出されたら行く先が無
いのも又同じ……

ただ……何でしょうか。最終的には「若さ」の特権とでも申しましょうか、
閉塞感が漂う中、ある一つの勝利を得て、ちょっとは何かが変わったかな?
彼には自力で此処を脱出する為の自信が付いたのかな……と仄かに感じさせて
映画が終わる……

純然たるハッピーエンドではありませんが、大スターを入れてお膳立てをし
この結末とはある意味潔いし、爽快感すら感じます。
そして……人間社会って言うものは、時と場所を変えても法則は変わらない
と言うことを再確認出来た一本でありました。

初代「大河浪漫を愛する会」大倉 里司

(2005年4月9日DVDにて鑑賞)

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