(交)『ショートバス』

ジェイムズ(ポール・ドーソンさま)は30代のハンサムな
ゲイ。いつも深い悩みを抱えており、自分をビデオ撮影する
のを日課にしている。
そんな彼を気遣うパートナーは優しいジェイミー(PJ・デ
ボーイさま)。彼らの周囲にはそれぞれ性に悩む5人の男女
がいた。オーガズムを感じたことがないカップル・カウンセ
ラーのソフィア(スックイン・リー御嬢様)。
それに薄々気付いているのが夫のロブ(ラファエル・バーカ
ーさま)。
職業はプロのSM女王のセヴリン(リンジー・ビーミッシュ
御嬢様)。ジェイムズとジェイミーの二人が好きで好きでし
ょうがない美男子セス(ジェイ・ブラナンさま)。カレブ
(ピーター・スティクルスさま)はジェイムズのストーカー…。
そしてアンダーグラウンド・パーティ”ショートバス”の
主催者、ジャスティン・ボンド(御本人)。こんな7人は
どこに行き着くのか?

今やカルト・ムービーとなった感のある『ヘドウィッグ・
アンド・アングリー・インチ』のジョン・キャメロン・ミッ
チェルが放った愛の賛歌。

今回感じたのは、前作の『ヘドウィグ〜』が、舞台となる
場所が固定されていないし、場所が移動するのに対して、
今回の『ショートバス』に関しては、舞台がニューヨーク
であり、それ以外の都市では成立しない話であると言う点
が大きく異なります。
この映画の舞台となる為には、政治の都であるワシントン
DCは最も不向きな街ですし、かと言って映画の都である
ロサンゼルスでは太陽の光が強すぎる。人種のるつぼであり
アートの都であるニューヨークで無いと、この話が成立し
ないのですね。でありますから、冒頭シーンにて今も昔も
ニューヨークの象徴である「自由の女神」が出てきて、更
に「今」の象徴として「世界貿易センタービル跡地」が出
てくる次第。出てこないのは、エンパイア・ステートビル
なんですが、「帝国」と言う響きがお気に召さなかったの
かな?(^^;

さて、今回の映画を観ていて一番感じたことは、「愛と性」
の多様性と言う事でしょうか?一見するとこの映画の中では
「性」の部分だけが強調されがちですが、セックスと言う物
は、相手が居て初めて成立するもの。ソフィアが満足出来な
くて、バイブで局部に出し入れするシーンも、ジェイムズが
アクロバティックな体位でオナニーをするシーンも挿入され
ているのですが、どこと無く虚しさが漂っております。

この映画を象徴しているのが、ソフィアが”ショートバス”
にて、リモコン式のボールを局部に入れて、そのリモコンを
パートナーであるロブに託すのですが、そのリモコンが他人
の手に渡ってしまったと知った時に彼女が激怒するのですよ。
これが実に象徴的だなぁ……と思った次第です。
たとえ、ボールと言う人工物を使っていても、それをコント
ロールするのは、愛している彼にやって欲しいと言う心情。
そして、それを忘れてしまった彼に対しての怒りと不満。

また、精神的にも肉体的にも満たされている筈のゲイのカッ
プルのジェイムズとジェイミーを取り巻く関係もまた一筋縄
では行かないものです。
ただ、自分の偏見かも知れませんが、ゲイ同士の年季の入っ
たカップルの場合、相手に男が居てもそれはそれで受け止め、
自分を愛してくれればそれで良いと言う感覚が非常に巧く表
現されているのには、流石に「判っている人」だなぁ……と
唸らされてしまいました。

ラストは、こう来たのか……と言う形での、暖かな光に包ま
れての小粋な切り口。これがオープニングとも繋がっていて
一つの円環を形作っております。小品ですが実に愛しい映画
でありました。

初代「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2007年8月25日渋谷シネマライズにて鑑賞)

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