(愛)『キャリントン』

これは、1916年から1932年までの間、傍から見たら不毛と見える幾組
の男女間の純愛を描いた作品です。

ボーイッシュな格好をしていた閨秀画家ドーラ・キャリントン(エマ・トンプ
ソンさま)と、今世紀三大伝記作家の一人、リットン・ストレイチー(ジョナ
サン・プライスさま)は疎開先の遠縁の家で知り合う。ドーラは最初こそ、リッ
トンのことを快く思っていなかったが、婚約者マーク・ガードラー(ルーファス・
シーウェルさま)が激しく求愛するので、鬱陶しさもあってか彼との結婚に疑
問を持つ様になる。お互いに肉体関係を求めない二人の関係と言うこともあり、
とりあえずリットンのところにドーラは身を寄せ……リットンに惹かれていく
姿も自覚する様になる。第一次大戦が終り、前線からハンサムで逞しい青年レイ
フ・パートリッジ(スティーヴ・ウェディントンさま(*^^*)ポッ)が、二人の
元を訪れた……。
ドーラは、レイフのことを鬱陶しく感じていたが、リットンはレイフの筋肉隆々
の御身体とハンサムな顔に惹きつけられ(激しく同意)、そのレイフはドーラに
惚れてしまう。やがて3人の「危険な関係」がはじまろうとしていた。
が……それだけでは留まらず、レイフの親友、ジェラルド・ブレナン(サミュエ
ル・ウェストさま)も、レイフとの友人関係を気にしつつ、ドーラと肉体関係を
持ってしまうのでありました。

この映画を観るのは、これで3回目。感想を挙げるのはこれで二回目なんですが、
ある種の感慨を覚えずには居られないです。最初に観た切っ掛けは、当時付き合
っていた「三人目の彼」から強く薦められたからなんです。
彼は俳優でして、それも……メル・ギブソンの後輩筋だったと言う凄い経歴。
その彼が、「ジョナサン・プライスは一番難しい役を演じている!」と口を極め
て絶賛するのですね。確かに難しい役なんです。台詞で自分の感情を表現するの
では無く、ほんの僅かな仕種で「リットン・ストレイチー」と言う希代の評論家
の性格を浮かび上がらせ、彼が何を考え、どうしようとしているのか相手に伝え
なくては為らないのですから。カンヌ国際映画祭で主演男優賞を受賞したのも、
一回目観たときにスンナリ納得が行きました。
今だから言えますが、「三人目の彼」は、この映画のレイフのようにハンサムで
逞しかったですねぇ(懐)

古傷が懐かしく思い出されますが……もう一つ感慨を覚える理由は、リットンは
当時も……今も、ゲイから見て「モテ筋」の体格では無いんです。自分と同じく
極度の痩せ型で眼鏡を着用しており……しかも毒舌家(笑)ここまで似ていると他人
とは思えません。知性は比較に為らないですが……でも、考え方とか生き方、性
の在り方には他人事では無く、「自分の胸に突き刺さるように」判るのです。
とかく「ゲイ映画」の難点としては、映画だから仕方無いと言えばそうなんです
が、「やおい」系の方が好むような「美少年」や「美形」の方同士のカップルが
多いのですよ。だから、この映画のストレイチーや、『ブギー・ナイツ』のデブ
のスコティのように「ブス」が出てくると………それだけで感情移入しまくり!!
画面に食い入るように見詰め、映画人生を賭けて泣かせて頂きますね!(鬼火)

と……ついつい饒舌になってしまいますが、やはりレイフの存在なんですよ。
彼はノンケですから、ドーラに惚れて結婚。3人のゴンドラ。寝室は共に出来な
くとも、レイフが自分の側に居てくれるだけでリットンは嬉しいし、ドーラも
リットンが幸せならば……と「不幸」を享受する。

2回目観たときに、1回目の感想を書いたのですが、そのときはレイフは単なる
「女たらしの俗物」にしか見えなかったのですよ。でも、月日が流れ……3回目
の鑑賞のときには、かなり「鈍いところはあるけれども、基本的にはナイスガイ」
だなぁ……って思ったのですね。これは、ノンケの方に惚れてみれば判るのです
が、自分をゲイだと知っていて肉体的接触を持ってくれるのは「良い男」の証。(笑)

大概の男だったら逃げ出しますよ……ドーラに惹かれていたのもあったし、リッ
トンが経済的援助をしていたのもあるでしょう。でも、ラスト近くまで彼は別の
女性と結婚しながらも、リットンの最期を看取ったのが印象的なんです。そして、
ドーラが自殺未遂しかけたときの悲痛さは、しっかりと自分の魂を揺さ振りました。

ドーラと言う女性。これを観るまでは、エマ・トンプソンさまは「色の無い女優」
だと思っていたのですが、これは違います。他の映画は総て忘れ去っても、ドーラ・
キャリントンだけは心に深く刻みつけられることでしょう。

最初、この映画のテーマを考えたときは「決して満たされることが無い愛」の物語
と感じていました。今回は「本人たちにとっては、時折幸福で、満たそうとしても
がいた愛」の物語に感じ取れたのですね。

完璧じゃないから、誠心誠意尽くして、尽くして………そのプロセスが幸福だった
のでしょう。自分にとって観る度、人生を振り返る度に出会う一本がこの映画です。

「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2001年5月20日 ビデオにて鑑賞)

BGM:OST:『キャリントン』(マイケル・ナイマン中でもの最高作)

この映画に関しては、映画を通して女性の生き方を探る国宝的御殿
佐緒御嬢様のTheater5418も併せて御覧頂くことを強く推奨致します。

http://www1.ttv.ne.jp/~theater5418/cinema/carrington.html

 

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