(愛)『ゴッドandモンスター』

99年度の米国アカデミー脚色賞は、久々の激戦でして、『シンプル・プラン』
のスコット・B・スミス、『シン・レッド・ライン』のテレンス・マリックを
破って脚色賞に輝いたのが、この『ゴッドandモンスター』なのです。原作は未
読の為、比較が出来ないのが残念ですが……予想を遥かに上回る「愛」の物語
だったのです。

ハリウッド黄金期、フランケンシュタイン映画によって頂点を極めながらも謎の
引退を遂げた伝説の監督ジェームズ・ホエール(イアン・マッケラン様)は、脳
卒中で倒れたあと、日々自分の精神が錯乱してゆくことを怖れていた。家には殆
ど訪れる人も無く、メイドであるハンナ(リン・レッドグレイヴ様)が家事一切
を任されていた。そこに現れたのが、海兵隊上がりの流れ者、クレイトン・ブーン
(ブレンダン・フレイザー様)だった……彼の容姿を気に入ったホエールは、庭師
と言う役割を超えて絵のモデルとして彼に接近してゆくが、それは、同時にホエール
の過去へ通じる記憶の扉を開ける作業でもあった……。

イアン・マッケラン様は、「英国演劇界の重鎮」として紹介されることが多かっ
たのですが、実を言うと今迄彼のことは余り好きでは無かったのです。それと言
うのは、アクが強すぎる役柄が多く、どこか下卑た感じがしたのですが……今回
は、彼以外この役は出来ないだろうと言う位のハマリ役でして、数々の主演男優
賞を根こそぎ持っていったのも肯ける出来栄えですし、控えた演技が逆に哀しみ
を増長させているんですね。

そして、海兵隊上がりのブーンを演じた、ブレンダン・フレイザー様も、今迄観
てきた中では最高の出来栄えです。「肉体派」と言う触れ込みで紹介されること
が多かったですが、彼の身体は奇麗ですし……「神々しい」肉体と、ちょっと鈍
い役処を演じながらも……「一番大切なもの」を最後に見出す過程は絶品です。

ホエールには遠く及ばないし、最初は金目当てで彼に近づこうとする節もある
そして、生理的にゲイ嫌いなのですけれど……徐々にブーンが持っていた心の
闇をホエールとの対話によって昇華させ、最後にはホエールの魂を受け継ごう
としている……これが「愛」でなくて何でありましょうか……(涙)

ブーンも自分の限界を感じているのだけれども、それが表に出せない………
ホエールは自分の限界をとうに知り尽くして、静かに幕を下ろそうとしている。
その二つの魂と身体……そして「時間」が「映画」と言うマジックに因って結び
付けられたとき「奇跡」は起こりませんですが、「新しい芽」は確実に生まれ、
そして息づいていくことでしょう……。

ホエールを静かに見守るメイドのハンナ(リン・レッドグレイヴ様)も熱心な基
督教徒の為、ホモセクシュアルをソドミーとして嫌悪する反面、ブーンの登場よ
り「忌まわしい行為」と、それとは裏腹に、ブーンを愛することによりホエール
が傷つくことを怖れているんですね。

個人的には、ぼくがゲイのせいもあるけれども、ホエールの心境が一つ一つ痛み
を込めて伝わってきますし、ホラー映画への「愛」が全開なんですよ(涙)
ラストのクレジットの出し方は、もう……それだけで泣けてしまいます。
そして、第一次大戦のトラウマが『フランケンシュタイン』を生み、ベトナム戦争
が『ゾンビ』のメイクを担当したトム・サビーニの体験迄繋がっていくことに深い
感慨を覚えます。

ホラー映画へのオマージュとして『エド・ウッド』と並ぶ出来栄えであることは、
ぼくが保証致します。早くも今年のベスト1候補となりました。

「大河浪漫を愛する会」
自称「カルト部屋御挨拶係」大倉 里司
(2000年2月27日 ビデオにて鑑賞)

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