(癒)『アローン〜ひとり』

映画祭の楽しみの一つは、内容が優れていながらも、今一つ「売り」の要素が
無い為に日本で公開されないお蔵入りの映画を観れることがあると思う。

この『アローンーひとり』も、有名スターは出て居ないし、監督も無名。これ
から映画祭出品を重ねて受賞歴を重ねれば、公開の目処は立つかも知れません
が………。(願)

物語の方は、スペインのある都市で、横暴な父の元を離れ、一人暮らしている
マリア(アナ・フェルナンデス様)に、父が入院していたとの知らせが届く。
しかも、病院の方は彼女が住んでいる街にあった……。

父の看護の為、老いた母(マリア・ガリアナ様)が、娘のマリアのアパートに
暫くの間滞在することになる。老いた母の訪問により娘の廻りの環境が徐々に、
だが確実に変化を遂げていくのでありました………。

何処と言って新しい所は無い映画ですが、何気ない生活描写の中に、その人達
がどう生きてきたか?と言う絵作りが完璧な為にアッと言う間にアナが住んで
いるアパートメントの住人の一人になった気分にすらさせられます。

自分も故郷を捨てた身なので良く判るのですが、親の嫌な部分とか、生き方が
知らず知らずの内に身に付いてしまって、何とか直したいと思いつつ流されて
しまう日常生活が本当に良く描き出されております。

母の存在。娘の生き方に干渉はしないけれども、それが故に娘にとっては、負
担に感じる日々………。

が、一番賢い生き方を選択してきたのは、紛れも無く母でして、学問こそ無い
のですが、「人が何を望んでいるのか?」を感じ取り、邪魔に為らない様に慈
愛の眼差しを差し込む………。

父は酒飲みで、理由も無く母を殴り………黙って耐えている母の存在が将来の
自分の姿だと感じ、娘は家を出た………が、どうした訳か父にそっくりな男に
身を任せてしまう。

この映画は、そうした男達の存在をも、責めもせず、かと言って庇いもせず在
るが侭に見つめている。

無名の俳優さんばかりらしいが、さり気ない仕種の一つ一つに「重み」が感じ
られるのですね………。

それぞれの心と今迄歩んできた人生の中にそれぞれの苦悩を抱えてきた人々が
「母」の存在によって、収斂されていく様が観ていてほ〜っと息を継げる感じ
が致しました。

自分が一番感情移入出来たのは、階下に住む老紳士なのですね………
この映画に出てくる人間の中では、母と共に人生をあるがままに受け止めてい
る感じがしたのですね。

或る程度達観していても、新たなる出会いが有ると………縋らざるを得ないで
も、それをストレートに出すには歳を取り過ぎてしまった感じが良く出ており
「そうだったのね………」と我が身を振り返り、何回か付き合ってきた老紳士
の姿と重ね合わせたのですよ。

この映画の感想で、インターネット上で読める一番確実な評は、ぼくでは無く
菜穂美御嬢様が書かれたものであると僕は思っております。

此方をクリックすると「菜穂美の映画の小部屋」に以降しますので、

是非併せて御覧頂ければ幸いに存じます。

「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(11月1日第12回東京国際映画祭インターナショナルコンペティション)

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