(夢)『父親たちの星条旗』(3回目の鑑賞)

皆様、お今晩は。3度目の鑑賞は、旧新宿東急、現在の
新宿ミラノ2での鑑賞です。新宿ミラノ1は、シネコン
と比較してみても見劣りがしない大劇場ですが、ここは
やっぱり侘しいと言うか、何だか場末の匂いがするんで
すよねぇ……(爆)

本題に入る前にウォーミングアップとして今回は、字幕
の事について少々触れておきたいと考えております。一
回目の鑑賞は字幕版で、二回目の鑑賞は日本語吹替え版
だったのですが、日本語吹替え版の欠点は、硫黄島に向
かう艦船の中で聞く「東京ローズ」がDJを務めた「ゼ
ロ・アワー」の中での歌に字幕が入っていない事と、も
う一つは、字幕版には登場した「登場人物紹介」が為さ
れて居なかったことなのです。
『SAYURI』で罵声の限りを浴びせた戸田奈津子女
史の字幕ですが、今回は細部迄気を利かせた上質な出来
栄えとなっております。

さて今回は、ライアン・フィリップスさま演じたジョン
(ドク)・ブラッドリーについて語る番ですが、非常に
難儀であります。そこで彼を理解する為に二人の登場人
物を紹介したいと考えております。一人目は、この映画
の原作者であり、彼の息子であったジェイムズ・ブラッ
ドリー(トーマス・マッカーシーさま)と、もう一人は
硫黄島での彼のバディ(相棒)であったラルフ・イグナ
トースキー(ジェイミー・ベルさま)なんです。

この映画の冒頭で、荒野を彷徨う一人の兵士……そして
あちら此方から聞こえてくる「コーマン(衛生兵)」と
言う叫び声。ハッと目覚めたのは71歳を迎えたジョン
・ブラッドリー。かつてのドクでありました。

50年経っても色褪せない戦地での記憶。たったひとり
の国旗掲揚者の生き残り。

彼は数々の柩を見つめながら語り出します「本当の戦争
を知っている物は、それについて語らないものだ……」
そうして階段を上がっていると突如発作を起こして「あ
いつは何処に行った、どこに居る?」と呻く……。
場面は変わって、息子のジェイムズが病院に駆け込むシ
ーンが挿入されます。

再度、彼の回想シーン。真っ暗闇の中、閃光弾らしき物
が夜空を照らし出します。岩山らしきものを登る3人の
兵士……それは、閃光弾では無く歓迎の花火であり、岩
山は岩山では無くハリボテだと言うことが直ぐに判明す
るのですが、ここで初めてドク・ブラッドリーのフラッ
シュバックが始まります。その中にあったのは夜空を照
らす閃光弾の光、暗闇の中「コーマン」と叫び声。バデ
ィのイギー(苗字であるイグナトースキーの略称)が止
めるにも係わらず、一人救助に向かうドク。しかし、戻
った時にはイギーの姿は無く、別の兵士が塹壕に居た。
これがドクとイギーとの永遠の別れになろうとは、その
時のドクは夢にも思って居なかった……。

長々と書いてしまったのでありますが、この映画での主
要な戦闘シーンの殆どは、ドクの眼から見た戦場の場面
であります。例外は2箇所だけありまして、アダム・ビ
ーチさま演じたアイラ・ヘイズ一等兵が、マイク・スト
ランク軍曹(バリー・ペッパーさま)と暗闇の塹壕に入
り、襲ってきた日本兵を殺傷する場面と、洞窟の中で手
榴弾に因って自決した日本兵を見るシーンだけなんです。

この映画の中で最も多くの「死」を見取るのがドクの役
割であるのですが、ドクが最も見たくなかった「死」が
バディであるイギーの死だったのでは無いでしょうか?

映画の中では洞窟に入ったドクがイギーの死体を見つけ
るところで留まっていますが、日本軍に因って拉致され、
あらゆる拷問を受け、最後は嬲り殺し(陰部を切られて
口に突っ込まれていた程)

それから10年の年月が流れ、アーリントン国立共同墓地
にある合衆国海兵隊記念碑の除幕式が行われ、ドク、アイ
ラ、レイニーの3人が最後に顔を合わせたその前後の期間
に、ドクがイリノイ州にあるイギーの実家を訪問し、イギ
ーの母であるフラーンシス・イグナトースキーに真相を話
しているシーンが挿入されております。

それら一連の事が語られた後に、71歳になったドクとそ
の息子ジェイムズとの会話のシーンがあるのでありますが、
これ……実は脚色でして、1994年1月11日にジョン・
ブラッドリーは他界した際には、息子のジェイムズは死に目
には間に合ったものの、その際には既に彼の意識は無く、当
然の事ながら映画の中で交わされた様な会話は行われていな
かったのです!

ここに脚本家のポール・ハギスの真骨頂が出ていると考えて
います。即ち”映画”の中だけでも、実際には行えなかった
父と子の「願い」を挿入した。
そして、この映画にはもう一つの「最後の願い」が用意され
ております。

この映画のラストシーンは、硫黄島のビーチで、波と戯れる
海兵隊員の姿を描き出しており、それがこの映画に静かなる
感動と余韻を与えているのでありますが、実際に史実と合致
しているのは、引率したのが、イージー中隊を率いたデイブ
・セヴェランス大尉(ニール・マクドナーさま)であった事
だけでして、野暮な事を書かせて頂ければ以下の点で異なる
んです。

1.水遊びをしたのは、上陸した浜とは擂鉢山を隔てて反対
側のビーチである。

まあ……この点はどうでも良いことなんですが、次の点は極
めて重要な事実でして、それは……

2.この時点で、イギー、マイク・ストランク、ハーロン・
ブロック(ベン・ウォーカーさま)の3人が戦死している!

ですが……2番に関しては、美しい嘘だと思っています。ビ
ーチに居た13人の内、顔がハッキリと判別出来るのはドク
とセヴェランス大尉の二人だけでありますが、浜辺で楽しげ
に遊んでいた中には、ハーロンもフランクリンも、マイクも
そしてイギーも居たと信じていたいのです。

ささやかな願いではありますが、戦争とその後に組まれた宣
伝と言う人間が作った大きな黒い渦の中に、一つだけ純白の
嘘が混じっていたからと言って、それは決して非難されるべ
きものでは無いと自分は信じております。

初代「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2006年11月11日新宿ミラノ2にて字幕版鑑賞)

第3回の鑑賞を終えて、とりあえずドク、アイラ、レイニー
の3人の視点で映画を綴ってみました。ひとまず、形として
は整ったし、自分の中では全てのシーンでの意味が繋がって
おります。一連の流れとしてはこれで打ち止めにして、次回
では、国旗掲揚者の残りの二人であるハーロン・ブロック伍
長、フランクリン・サウスリー一等兵、そしてマイティ・
セブンスとして戦費調達ツアーに同行したキース・ビーチ軍
曹、そしてイージー中隊を率いた功績を認められて銀星章を
授与されたデイブ・セヴェランス大尉等について記して行き
たいと考えておりますが、アップするのは11月後半になる
ことになるでしょう。

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