(時)『父親たちの星条旗』(4回目の感想)

皆様、お今晩は。大概の映画と言うものは、一度観てそれで御終
いか?或いは気が向いた時に二回目を観て、「ああ、そういえば、
このシーンはこうだったよなぁ」と思い返す程度のものでしょう。
自分も100本中99本迄は、そうやってスルーさせていますが、
この『父親たちの星条旗』は、そんなヤワな代物ではありません。
何と4回目観ても新たに発見があったと言う、実に恐るべき映画
なのであります。今回は脇の脇迄含めた「総集編」としてお送り
したいと考えております。


”4人のナレーションについて”

この映画で印象的なのは、イーストウッド御大が作曲した悲しげ
なメロディと共に流されるナレーションなのですが、実はこのナ
レーターは4人居るのです。俳優さんの名前迄は押さえきれてい
ないので役名だけ書いていきますと……

1.デイブ・セヴェランス元大尉

冒頭のナレーションですが、3回目迄はジョン・”ドク”・ブラ
ッドリーのナレーションだと思っていたんですけれども、実は
デイブ・セヴェランス大尉が、ジェイムズ・ブラッドリーのイン
タビューを受けての「語り」だったのです。前半のナレーション
は殆ど彼の担当であり、非常に重要な役割を果たしています。

2.キース・ビーチ元軍曹

ドク、レイニー、アイラと共に”マイティ・セブンス”に同行す
る役割を仰せつかっておりまして、退役後はセールスマンの仕事
をしておりました。その道中にアイラの姿を見かけますが……
そうなんです。彼の担当する箇所は、”マイティ・セブンズ”の
部分とアイラのヒッチハイク行のところです。短い箇所ですが
実に忘れがたい語りをしております。

3.ウォルター・ガスト元軍曹

ジェイムズ・ブラッドリーのインタビューを受けていて眼鏡を掛
けて、両腕がありません。実は、彼の担当している部分は、戦地
の描写を含めて殆どが「脚色」なのです。ですが、これには重大
な意味が秘められているんですねぇ。”ドク”が負傷して、海岸
にある救護所に運び入れる迄の担当です。

4.ジェイムズ・ブラッドリー(原作者)

ドクが故郷であるアンティゴーに戻ってから、アイラの死、レイ
ニーの末路、そして父の語らなかった過去を含め、「後日談」の
部分の全てのナレーションを担当。デイブ・セヴェランス元大尉
と並んで最も重要なナレーションを担当しています。


”忘れがたき人々”

・デイブ・セヴェランス大尉(ニール・マクドナーさま)

この人が居なければ、原作がまず仕上がらなかったであろうと、
原作者のジェイムズ・ブラッドリーが真っ先に謝辞を贈っている
人物です。マイク・ストランク軍曹(バリー・ペッパーさま)の
上官でもあり、またジョン・”ドク”・ブラッドリーを「海軍
殊勲章」(名誉勲章に次ぐ最高位の勲章、並みの将軍クラスでは
先ず授与されない)に推挙したのも彼の功績。
彼自身は、イージー中隊を指揮した功績により「銀星章」を授与
されている。そして、もう一つは部下達を連れてビーチに連れて
行ったこと……美しい思い出を遺してくれてありがとう!

・フランクリン・スースリー一等兵(ジョゼフ・クロスさま)

コメディ・リリーフとして楽しませて下さいましたね。ジョン・
”ドク”・ブラッドリーが生前「唯一」遺したインタビューの中
で貴方のことをこう言っていますよ。

「われわれは、ケンタッキーなまりでしゃべる彼の話が大好きで
した」と……。

天国に行っても「マスターベーション申請書」は有効だと思いま
す。どうか安らかに眠って下さい。

・ハーロン・ブロック伍長(ベン・ウォーカーさま)

御母上の姿、そして貴方が居なくなった事による家庭崩壊…そう、
貴方は生きている時の出番こそ少なかったものの、死後実に大き
な問題提起をされましたね。ドクは貴方の事を評してこう言って
います。

「背の高いテキサスっ子。いつも微笑んでいました……」

貴方の魂がどうか安らかな眠りについておられますように……。

・ハンク・ハンセン軍曹(ポール・ウォーカーさま)

ハーロンと間違われて6人の中に入って仕舞いました。実を言い
ますと貴方の事は当初名簿に入れる積りは無かったのです。しか
し、シュリアー中尉、トーマス軍曹、リンドバーグ伍長、そして
貴方と最初に星条旗を揚げたのは間違い無いことですし、現在
硫黄島に稚拙ではありますが、4人の姿を形どった記念碑がある
と知って「最初の国旗掲揚者」の代表として貴方とリンドバーグ
伍長を登場させておりましたね。

どうか御母上と共に安らかに眠っていて下さい……。

・キース・ビーチ軍曹(ジョン・ベンジャミン・ヒッキーさま)

この映画が「大河浪漫」として成立したのは、貴方の存在が大き
かった様に思います。とりわけアイラと全米を廻っていた時、
そして6〜7年後、セールスで中西部を廻っていた時、アイラの
姿を見かけられましたね。そして現在、そのことを「回想」とし
てお話されている事に2回目に気がついてこれぞ「大河の真髄」
と胸が熱くなった事を鮮明に思い起こしました。時制を変えて
3回に渡って登場するのは、ドクと貴方だけなんです。
アイラが酒浸りになるのを助長させたのは、確かに貴方の影響
かも知れません。でも、彼は飲まずには居られなかった……。
酒の愚痴を聞いて下さり、呑んで語っている間だけは、アイラも
少しだけ気が晴れたのかも知れません。

最後に……ウォルター・ガスト軍曹さまへ

この映画でレイニー・ギャグノン(ジェシー・ブラッドフォード
さま)以上に脚色されたのは貴方だけかも知れません。
映画の中では、硫黄島に向かう艦船から転落した兵士を見て、
「救援ボートがくるんだろう」と言ったのが貴方で、「いいや、
誰も助けにこないさ」と突き放した言い方をしたのが、ハンク・
ハンセン軍曹となっておりますが、この二つとも創作でして、
艦船から落ちた兵士は居たものの、この様な会話が行われたと
言う記録はありません。

で……これが極めて重要なメタファーとなるんですが、ドクが
脚をやられて、それでも這いずり回って傷病兵を救護している
のですが、そのドクを探し廻ったのが貴方と言う設定になって
おります。
ところが……実際は、硫黄島上陸2日目、1944年2月21日
に貴方は両腕をもぎ取られ本土へと帰還した……それが史実です。
では、何故貴方を此処迄脚色して映画の中に出させたかと言えば
「傷病兵代表」として選ばれたのでは無いか?と思っています。
そして、艦船のエピソードで「戦友を見捨てないと言う伝説は
ウソだ」と思い知らされるのでありますが、取材に応じたと言
う設定で「最後まで友を見捨てない男が居た。それが君のお父
さんだよ」と言わしめているんですねぇ。此処で一つの円環が
閉じてジェイムズ・ブラッドリー(トーマス・マッカーシーさま)
の語りへと引き継がれていきます。

以上で語るべき事は殆ど語り尽くしました。でも、12月8日迄
にもう一度だけこの映画を観て感想を書く「従軍記者」としての
視点から開放されて映画の中に浸りたいですねぇ……。

繰り返して申しますが、4回観てその度に新しい発見がある映画
なんてそうそうあるものではありません。硫黄島二部作は映画史
に名を留める映画として記録されることでしょう。

初代「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2006年11月24日ワーナーマイカルシネマズ市川妙典にて鑑賞)

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