(縁)『硫黄島からの手紙』(序章)

太平洋戦争最大の激戦地、硫黄島。緻密な防御戦術で米軍を恐怖
に陥れた栗林忠道中将(渡辺謙さま)は、家族へ愛情あふれる手
紙を送り続けた家庭人でもあった。そんな彼が硫黄島に着任した
のは1944年6月8日の事。島に着くなり、彼はこの島に水が
無い事と、理不尽な上官による新兵苛めの現場を目撃してしまう。
栗林の一言で救われたのが、大宮でパン屋を営み妻子を残して召
兵されてしまった西郷(二宮和也さま)だった。
栗林は、着任早々海軍のみならず、陸軍の猛烈な反対を押し切り、
地下にトンネルを張り巡らした要塞とし、米軍が上陸するであろ
う二根浜に一旦米兵を上陸させた上で、反撃を行うと言う今迄の
戦術とは全く異なる戦術を指揮する。そんな型破りの指揮官とウ
マが合ったのが、御馬さんが大好きなバロン西こと西和一中佐
(伊原剛志さま)。ウィスキー党な栗林に対し、西はブランデー
党でありました(^^;
栗林の唱える戦術に真っ向から異を唱え、西中佐とも対立するの
が海軍出身の伊藤中尉(中村獅童さま)その不調和音の中で西郷
と共に揺れ動くのが、最初は憲兵出身と言う事で西郷から警戒
されていた清水(加瀬亮さま)でありました。彼が硫黄島に送り
込まれたのには、哀しい過去があったからなのです……。

公開迄2週間以上あるので、どこで線引きをするのか非常に苦慮
するのでありますが、「硫黄島2部作」と言うのは嘘偽りの無い
事実でありまして、『父親たちの星条旗』を最初に観てから、こ
の『硫黄島からの手紙』を観ると円環が形作られているのが良く
判ります。

勿論、どちらか片一方しか観ない選択もアリですし、個別の作品
として両方共に成立しているんですけれども、やはり両作品が並
んでこその一大叙事詩なんですよねぇ……。

この映画のオープニングは、『父親たちの星条旗』のラストシーン
で描かれた「戦勝記念碑」とは反対側の位置にある「硫黄島戦没
者顕彰碑」から始まります。この碑は硫黄島が日本に返還されて
丁度一年と一日目の1969年6月27日に除幕式が行われ、本日
に至っています。この際に遺族代表として市丸利之助少将(栗林
中将の右腕的存在)の次女の美恵子御嬢様が参列されております。

話が横道に逸れてばかりで申し訳無いのですが、映画を観る前に
硫黄島の事を少し知っておいて欲しいなぁ……と思った次第なん
ですね。

「アメリカのきもち、日本のきもち、同じきもち----。」

チラシでこのコピーを目にしただけで落涙してしまいましたが、
日本兵にしても、米兵にしても、残虐なことをする反面、自分
の中から突き動かされる「良心の声」に従って最善と思える行動
を取ります。浄土真宗の祖、親鸞上人は御弟子さんに向かって
こう語りました……。

「君が一万人を殺さずに済むのは、そうした事に「因縁」が無
いからなのだ。「因縁」があれば、どんなに殺したくなくても一
万人を殺さざるを得なくなる」

一見すると大量殺人のススメとも取られてしまいそうな危険な
発言でありますが、真意は「人間と言うものは目に見えない大き
な力で動かされている」本人の意思で動かせられるものには限度
がある。そう自分は解釈しているのでありますが、自分が今現在
どこの戦場にも逝かずにのうのうとパコソンの前に座ってキーボ
ードを叩いていられるのも「戦争に逝く因縁」が無かったからな
んですね。

戦場に赴くことがあっても、出来れば自分の手を汚さずに五体満
足で戻って帰りたい……それは日米両兵士の共有する想いだった
のでは無いでしょうか?
ですが、殺さなければ殺される……殊に太平洋戦線では、実に
悲しいことでありますが、衛生兵殺傷を大いに推奨しておりまし
た。理由は、一人の衛生兵を犠牲にすればそれを助けようとする
多くの敵兵を巻き添えにする事が出来るからなんです。
因みに欧州戦線ではドイツ軍は、激戦であっても連合軍の衛生兵
にだけは銃口を向けない「矜持」がありました。
戦争にルールは無いとは思っていても、やはりどこかで最後の
一線だけは越えたくないと思っている自分がおります。
そうは思っていても、戦友を無残に殺された……となれば、捕虜
にした敵兵を目の前にして、手厚く看護出来るのか?
『父親たちの星条旗』で、日本兵によって拉致されたイギーが受
けた拷問死。それを自分が加担していたかも知れないのです。

映画を観ながら、自分に向かって此処までの問いかけをした映画は
1999年の『シン・レッド・ライン』以来の事であります。
映画公開が始まりましたら、清水、西郷、栗林、西、そして伊藤
と5人それぞれの視点でこの映画を見取る事に致しましょう。

12月9日前後にアップ予定の第1回目は、加瀬亮さま演じた
清水から観た硫黄島を語りたいと考えております。

初代「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2006年11月22日 ワーナーブラザース試写室にて鑑賞)

「あ」行で、はじまる映画の感想にもどる

『硫黄島からの手紙』(第1回〜清水編に行く)

『硫黄島からの手紙』(第2回〜伊藤編に行く)

『硫黄島からの手紙』(第3回〜バロン西編に行く)

『硫黄島からの手紙』(第4回〜栗林中将編に行く)

『硫黄島からの手紙』(第5回〜西郷編に行く)

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『父親たちの星条旗』2回目の鑑賞に行く

『父親たちの星条旗』3回目の鑑賞に行く

『父親たちの星条旗』4回目の鑑賞に行く

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