(環)『硫黄島からの手紙』(第5回〜西郷編)

皆様、お今晩は。自分がこれから書く内容は映画『硫黄島から
の手紙』の内容にいきなり入り込んだ内容となっております。
未見の方は(序章)だけお読み下さい。













皆様、お今晩は。10月28日から始まりました「硫黄島二部
作」の連載を始めて今回で丁度10回目。最終回に当ります。
最後を彩るのは二宮和成さま演じた西郷です。

大宮にてパン屋を営み妻である花子(裕木奈江御嬢様)と未だ
見ぬ子を残し「一銭五厘の赤紙(召集令状)によって本土から
1250キロ離れた硫黄島にて従軍させられております。
他の兵士と決定的に違うのは、「職業軍人」ではなく「召集兵」
である点。

この映画を最初に観た時に思ったことは、「西郷はメッセンジ
ャーである」と言う事なんですねぇ。二等兵として擂鉢山を守
る312連隊から島の北東部にある司令部壕迄、地獄巡りの旅
を強いられるのでありますが、この間に主要登場人物に係わる
殆どの現場に唯一居合わせていた人物なんですね。
そして、「メッセンジャー」としての役割は、戦地でのパシリ
としての役割だけでは無く、栗林中将から渡された書類の内、
「手紙」だけは焼却せずに、袋に詰めて現在へとタイムカプセ
ルの様な役割も果させている……更に、これが一番重要な点な
のでありますが、二宮和成と言う天性の役者を西郷に据えた事に
より「過去と現在」との時制の壁が消えて無くなっているんで
す!

この映画は2006年の硫黄島で、埋められていた手紙が見つ
かる所から始まりますが、その発掘シーンと交差する様に19
44年の硫黄島の「穴掘り」の語りから「本編」はスタート
していきます。

「花子、俺は掘り続けている、そこで戦えそこで死ぬことになる
穴。花子……俺は墓穴を掘っているんだろうか?」と西郷の心中
の語りが始まり、共に穴掘りをしていた柏原(ヤマグチ タケ
シさま)に「全く、この島は臭えし、草木一つ生えねえし、そ
して何より水が無え。こんなちっぽけな島アメ公にくれてやっ
たらいいんだよ」と語り、その現場を谷田大尉(坂東 工さま)
に聞きつけられ「この非国民めが!(--メ)」と殴られるシーンへ
と繋がっていくのでありますが、この語り口があるからこそ60
年前の日本人が観ていても違和感無く当時(?)の硫黄島へ誘う
ナビゲーターの役割をも果たしているんです。

西郷と行動を共にするのは、第1回目で御紹介した憲兵隊出身
の清水(加瀬亮さま)と、名誉の赤痢(?)で亡くなった柏原
(ヤマグチ タケシさま)そして、何かと事情通な野崎(松崎
悠希さま)であります。この4人を中心とした「二等兵組」が
末端兵士の怨念を晴らすべく愚痴るわ、喋るわ……流石に元
エリートコースを歩んできた清水だけは、話の輪の中に入って
こないものの、当時応集されてきた「無名兵士の代弁者」として
の機能も果たしています。無名兵士の代弁者と書きましたが、
冒頭に記した西郷の台詞「そして何より水が無ぇ」と言うのは
硫黄島生還者の兵士の手記に必ず書いてある事柄でして、水の
一滴は血の一滴よりもこの島では尊いものでした。
戦前1千人の住民でやっとやりくり出来る筈の水でしたが、この
島に進駐した日本兵はその20倍近い2万人!米軍の予想では
硫黄島に進駐している日本軍は1万人と想定していたのですが、
それは水が無いことを計算の上で出したデータだったのです。
ですから、投降した清水も真っ先に水筒を出されてゴクゴクと
呑み干しておりましたし、西郷達が辿りついた司令部壕で、栗林
中将が「水を出しなさい」と副官の藤田中尉に言うものの、「も
うここには水はありません」と首を横に振る場面が実に痛いので
あります。(涙)

さて、この映画で久々に御目に掛かったものがありまして、それ
は「千人針」実際にはシラミの巣となってしまうので使われる事
は無かったそうでありますが、この映画では実に効果的に使われ
ておりました。清水が投降する際に西郷が清水が持っていた千人
針のおき忘れに気が付いて持って行こうとするのでありますが、
清水の脱走計画が発覚して、手渡せず。投降した清水が同じ横浜
出身の兵士と話をしている最中に海兵隊員によって射殺され、
清水の亡骸を隠す様に西郷が清水の顔に千人針を乗せるシーンは
5回目迄は泣けて仕方ありませんでした。

最後の場面に栗林と「二度ある事は三度ある」と言って最後の
頼みとして「誰にも判らない様に埋めてくれ」と西郷に栗林は
遺志を託すのであります。約束を果した西郷は米兵に取り囲ま
れてしまいます。普通だったら殺されても不思議では無い展開
なのに西郷は後頭部を殴られ、海岸へと担架に載せられて運ばれ
ます。さて……その御隣に居た方とは…………





(ここで最後のサプライズが登場します)

 














気付いた方は少ないと思いますが、担架に乗せられて西郷の横に
居た方こそ、第一部の『父親たちの星条旗』で終始一貫自分の事
を語らなかった主人公!ドク・ブラッドリー(ライアン・フィリ
ップスさま)に他なりません。
ドクはドクで衛生兵として終始一貫、米国側から見た硫黄島の戦
いに散った若者達の死を見取り、西郷は西郷で日本側から見た硫
黄島での戦いで散った全ての者の最期を看取った。
この二人、違うのは寡黙であるか?饒舌なのか?だけでして、
二人の行動パターンは合わせ鏡の様に一致している箇所が多いの
ですね。その二人の主人公が枕を合わせて横になっていた事こそ
がこの映画を「硫黄島二部作」として見事に完結させている大き
な要因であると自分は信じて疑いません。

2ヶ月以上に渡って連載してきた本企画も今回で終了を迎えまし
た。お読み頂いた全ての方に感謝しつつ筆を置きたいと考えてお
ります。

初代「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2007年1月14日新宿ミラノ1にて鑑賞)

皆様、お久しぶりでございます。『父親たちの星条旗』並びに、
『硫黄島からの手紙』がDVD化されたことにより、これを鑑賞
された方から、ラストシーンで西郷の横に寝て居たのは、ドク・
ブラッドリー(ライアン・フィリップスさま)であると断定して
しまったのは事実誤認では無いか?と言う御指摘があり、冷静に
考えてみると、たまたま似たエキストラの方が居たので横に寝か
せてみたと言うのが真相らしいのです。
我田引水と申しますが、自説を強引に展開してしまい誤解を与え
てしまった事を謹んでお詫び致します。尚、本文そのものを修正
してしまうと、本来の文章がどうであったのかが判明出来なくな
るので、今回はこの訂正文のみを掲示する事に致します。
(2007年5月18日)

 

「あ」行で、はじまる映画の感想にもどる

『硫黄島からの手紙』(第1回〜清水編に行く)

『硫黄島からの手紙』(第2回〜伊藤編に行く)

『硫黄島からの手紙』(第3回〜バロン西編に行く)

『硫黄島からの手紙』(第4回〜栗林中将編に行く)

『父親たちの星条旗』1回目の感想に行く

『父親たちの星条旗』2回目の鑑賞に行く

『父親たちの星条旗』3回目の鑑賞に行く

『父親たちの星条旗』4回目の鑑賞に行く

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